被害者請求の方法について、復習したいと思います。(先月の山梨代協セミナーから抜粋)
後遺障害部分の損害が、重度の障害になると、 賠償金全体の平均85%・・・逃した魚は、本当に大きいのです。
損害賠償を氷山に例えると、眼に見える部分が傷害部分=治療を完了するまでの損害です。後遺障害部分の損害は、海の中で見えませんが、総損害額に占める割合は、12級以上ともなれば、85%となります。 赤本基準で、ムチウチで非該当、14級9号、12級13号を比較してみましょう。
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被害者請求の方法について、復習したいと思います。(先月の山梨代協セミナーから抜粋)
後遺障害部分の損害が、重度の障害になると、 賠償金全体の平均85%・・・逃した魚は、本当に大きいのです。
損害賠償を氷山に例えると、眼に見える部分が傷害部分=治療を完了するまでの損害です。後遺障害部分の損害は、海の中で見えませんが、総損害額に占める割合は、12級以上ともなれば、85%となります。 赤本基準で、ムチウチで非該当、14級9号、12級13号を比較してみましょう。
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ここ数年は愚痴も減ったつもりですが、今月はキツかった。
2県の代理業協会の研修講師に始まり、重傷事故・長期対応の案件の症状固定が重なり、また、死亡事故、肝炎、障害年金など、イレギュラーな案件も続々、そして何と言っても自賠責の審査中に依頼者様が亡くなったりと・・。重なる時は重なるものです。
事務所は先月からスタッフさんが増員したとはいえ、くたくたです。それでも、安易に社員に残業を押し付けることはできません。労働基準法を守り、残業を抑制する・・その結果、ボスに負担がかかるのは中小企業の宿命でしょうか。人手不足は常態的ですが、私達の仕事はその専門性から簡単に雇用できませんし、人材育成にも時間がかかりますので余計に大変です。人手不足は建築業界がより深刻なようです。数年前の不況から一転、空前の労働者不足の時代に突入したと言われています。世の中、何かと余ったり、不足したり・・ちょうどいい具合にはいかないものですね。 かつて、人気映画シリーズ「釣りバカ日誌」のファイナルで、スーさん(三國 連太郎さん演じる大手ゼネコンの社長)は社員・経営陣を前にこう言いました。
「経営不振は経営陣の責任であるり、雇用に手をつける時は、その前に経営者が辞めなければならない」、正確には覚えていませんが、つまり、収益悪化は経営陣のミスであって、リストラは経営者からで、社員に責任を取らせてはいけない・・。
アメリカの大企業のCEOに聞かせたいセリフです。
そのような、自らを律する心構えを経営者が持っていれば、きっとその会社は大丈夫なんだろうなと思います。 日々の業務を丁寧に積み重ねることはもちろん大前提です。しかし、私に課されていることはそれでだけではありません。社員がその志を全うできる、魅力的な会社を作っていかねばなりません。簡単に言えば、やりがいと労働環境の向上でしょうか。交通事故の調査業務は地味で、到底、人気のある業務とは言えません。ましては被害者側の調査業務など、未だ確立したものではありません。交通事故業務で脚光があたるのは常に弁護士です。また、実質を担っているのは、規模、解決数から保険会社と思います。
このような環境で、いかに受け皿足りうる会社を根付かせるか、これが今後20年のノルマと思っています。先は長く険しいものですが、へばっている場合ではありません。少し休んだら、前進あるのみです。
最終更新:2020.1.15
毎度、繰り返していますが、交通事故の重傷事案の解決に一番大事な書面は、後遺障害診断書に尽きます。
その診断書は医師が記載することになりますが、正直、完璧な診断書は少ないと思います。記載不足、不正確、余計な記述あり、左右を間違える、記載要領が自己流で的外れ・・・残念ながら、これが普通です。改めて復習したいと思います。近時の秋葉事務所が開いた研修会レジュメから抜粋しました。
最近、基本的な問い合わせ、質問が多い傾向です。私達にとっては日常業務の基本でも、被害者さんにとっては、生まれて初めて遭遇する交通事故かもしれません。当たり前ですが、被害者さん達にとって、基本的なことであっても難関となる問題です。
被害者請求の方法について、復習したいと思います。 (先月の山梨代協セミナーから抜粋) 被害者請求、必要書類と手続き
① 自動車損害賠償責任保険支払請求書
これは、被害者請求の表紙となるもので、請求者と振込銀行を明示し、実印を捺印します。 ② 印鑑登録証明書
請求者本人を確認するための印鑑登録証明書です。 ③ 交通事故証明書
郵便局から申請すれば、1週間以内に送達されます。 最近はネットで請求手続きできます。加害者欄には、窓口となる自賠責保険の会社名と証券番号が掲載されています。 続きを読む »
後遺障害申請のタイミングについて、復習したいと思います。 (先月の山梨代協セミナーから抜粋) 原則として、受傷から6カ月を経過すれば申請する。
ダラダラと漫然治療を続けてはならない。 却って認定率が下がる。
ムチウチでは、受傷から3、4カ月で、強引な治療の打ち切りが行われている。
例外を除いて、事故受傷から6カ月を経過すれば、いつでも申請することができます。 自賠責は6ヶ月にこだわらないと言っていますが、一定の治療努力の果てに残存した症状が後遺障害です。 例外とは、頭部外傷後の高次脳機能障害、PTSDなどの非器質性の精神障害は、少なくとも受傷から1年間の治療の継続と経過観察が重視されています。 逆に切断肢(腕や脚の切断)は見た通りですので、受傷直後に申請しても問題ありません。 西洋医学においては、治療の延長線上に、治癒と症状固定の概念を有しています。治癒とは、文字通り、治ったことであり、症状固定は、現在の治療を継続しても、短期的に改善が得られることはなく、治療を中断しても、悪化する可能性が考えられない状態となったことです。 したがって、治療を続け、6カ月を経過すれば、残存している症状を後遺障害として申請することになります。主治医から、「あとは日にち薬ですね」、などと言われたら、症状固定です。 続きを読む »
最近、基本的な問い合わせ、質問が多い傾向です。私達にとっては日常業務の基本でも、被害者さんにとっては、生まれて初めて遭遇する交通事故かもしれません。当たり前ですが、被害者さん達にとって、基本的なことであっても難関となる問題です。
後遺障害の定義について、復習したいと思います。 (先月の山梨代協セミナーから抜粋)
後遺症と後遺障害は、同じようで違います自賠法に規定されている後遺障害認定基準の詳細は、公開されていません
一般に馴染みのある言葉は、後遺症であって、後遺障害ではありません。 交通事故受傷では、一定の期間、治療を続けて回復を目指すことになりますが、治療を完了しても、スッキリしない症状を残していることが普通であり、これらの症状は、後遺症と呼ばれています。
では、後遺障害とは、自賠責保険で後遺障害等級が認定された後遺症のことです。 交通事故による後遺障害は、1~14級、140種の後遺障害が35系列に分類され、自動車損害賠償保障法に細かく規定されています(別紙:後遺障害等級)。労災の規定に準拠したものですが、後遺障害の認定基準に関する詳細情報は開示されていません。
後遺障害ですが、上位等級となれば、就労復帰も実現できない深刻な状態ですが、10~14級の中には、5年も経過すれば、限りなく、元通りとなるモノも、数多く存在しているのです。
常識的には、後遺障害といえば、植物人間や手足の切断を連想しますが、保険のプロである皆様は、「一生を棒に振ってしまうモノだけが後遺障害でない」ことに、認識を新たにする必要があります。
TFCC損傷は珍しい傷病名のはずです。確定的な診断など、専門医以外は困難です。しかし、この10年、その診断名を口にする被害者さんが激増しました。昔は単なる手首の捻挫でしたが、今や交通事故関連のHPには必ず解説されています。ある傷病名がネット情報で拡散され、ブレイクするのです。おかしな現象と思います。これを業界では”宮尾シンドローム”と呼んでいます。 そんな診断名は、まぼろし~
さて、本件のミッションは橈骨骨頭部の骨折を起因とする、尺骨突き上げによるTFCC損傷の立証です。過去に類似例を経験していますので、まずは12級を目指しました。しかし、そう簡単ではありません。
かつて、日本でも指折りの手関節専門医である3名の医師に面談しましたが、MRIの画像上、断裂やはく離が明確なものは手術適用ですが、不明瞭なものが圧倒的多数であり、真のTFCC損傷の診断名とするかは、かなり慎重でした。専門医は口を揃えて、「MRI画像は一つの要素であり、自覚症状の聴取はもちろん、触診や検査を重ねて、ようやく確定診断に至る」そうです。
あいまいな所見の場合、「手術をするか、しないか?」が問われます・・本当に痛みがひどいのか否か、ある意味、踏み絵のようです。 話を変えましょう。自賠責が画像所見を絶対とする理由は、事故受傷との直接因果関係を重視するからです。つまり、事故による人体の破壊(器質的損傷)にこだわります。一方、労災は経年性の変性が原因の一端であっても、「痛みがある」状態を大事にしてくれます。その点、労災は12級が取り易い。双方の審査基準の違いを感じるところです。とくに、(あいまいな)TFCC損傷を追求すると、自賠14級&労災12級の結果が定番に思えます。 ←誰だ? TFCC損傷は、どんだけ~?
【事案】
バイクで直進中、左折自動車に巻き込まれ受傷、右腕の肘(橈骨骨頭部)と第3指(中指)末節骨を骨折したもの。その後、尺骨突き上げ症候群を併発、手首のTFCC損傷の診断名が加わった。 続きを読む »
自賠責の後遺障害審査で非該当、もしくは想定より低い等級しか認定されなかった・・納得のいかない被害者さんは、異議申し立て(再請求)を検討します。相談の一定数は異議申し立てとなります。 さて、異議申し立てに関するノウハウですが、ネット情報は玉石混合ながら、多くに一致しているポイントはこれです。
新しい証拠を提出すること新しい医証が提出されて初めて、もう1度、審査・調査する必要が生じるのです。前回、提出した内容での審査は終わっているのです。前回と同じ書類を再提出して、「もう1度よく見てくれ!」「前回の判断は間違っている!」とまくし立てても、自賠責側は基本的に聞く耳を持っていないのです。確かに、微妙な判断で左右される障害の場合、再検証による認定内容の変更はあります。しかし、それはレアケースと心得えるべきです。
認定結果に諦めがつかず、毎年のように異議申し立てをしている人もいるようです。まるで、ライフワークです。何度、同じ書面で勝負しても無駄でしょう。また、新たな診断書、新たな検査結果を追加したとしても、既提出の診断内容を覆すほどのものでなければ、これも同じことです。総じて、”初回申請で勝負を決められなかった不利”を噛み締めることになります。
相談会では、他事務所に再申請を依頼したものの失敗したケースから、その異議申立書を目にすることがあります。よく出来ているものもありますが、一方、費用をとっていながら疑問を持たざるをえない書面も目にします。失敗例から学ぶ、ではありませんが、残念な例を挙げたいと思います。 ○ 誰でも「すごく痛い」と言います
被害者が自らの症状を切々と語ります。いかに、後遺症で苦しんでいるか・・。審査側も人の子、確かに感じ入ることはあるかもしれません。しかし、自賠法に則り、他覚的所見(医師の診断)から導き出される症状・数値が基準を満たさなければ、無駄となります。
多くの被害者は、感情をぶつけるだけの異議申し立てを、永劫に繰り返すことになります。 ○ 弁護士は医師ではありません
ある弁護士の書面ですが、医学書から学説を引用し、自賠責判断が間違っている事をつらつら書きつづっています。緻密な分析はまるで研究医、文章は裁判の準備書面のように構成されています。さすが大したものだと感心しますが、これではダメです。自賠責側も顧問医がおります。自賠責でも2度目の申請ともなれば、顧問医が分析・判断することになります。それが、弁護士の分析と一致していれば可能性は開けますが、それだけでは足りません。
そもそも、弁護士は医師ではありません。自賠責の顧問医は、被害者を実際に診ている主治医の新しい意見、専門医の診断書、検査結果を付せば、真剣に検証するでしょう。それらを欠いた、医師ではない素人の分析など、いくら論理的に文章を積み上げても、「新たな証拠」にはならないのです。
論理的に積み上げた分析は、ジャッジする第3者(=裁判官)が存在する訴訟での手法です。自賠責の審査はあくまで片面的審査です。自賠責側と意を同じくしなければ、等級は覆りません。自賠責を論破してドヤ顔?実に弁護士らしい陥穽に落ちてしまうのです。 ○ ...
ここまで毎度のごとく、人身傷害をディスってきました。裏を返せば、発売当時、保険に関わる者すべてが「本当にいい保険がでたものだなぁ」と大歓迎の保険だったのです。
「夢の全額補償」 と 「安心の実額補償」
「夢の全額補償」とは、自身の過失に関わらず、損害の全額が支払われる、しかも、相手との示談を待たず、支払ってくれる・・保険の常識を覆すものです。三井住友さん、あいおいニッセイ同和さんはこれを捨て去りましたけど。
「安心の実額補償」とは、死亡で○○万円、通院1日あたり○○円と、保険金額が決定している状態で契約する従来の保険ではなく、治療費や休業損害を実費で支払うことです。これによって、充実した補償が得られるはずですが、問題は、慰謝料や逸失利益といったものまで保険会社の基準で計算されてしまう点です。
人身傷害は元々、アメリカのNo Fault保険をベースに日本版を開発したものです。訴訟社会のアメリカでは、交通事故も当然に長い争いとなり、少なからず訴訟に発展します。No Fault保険は、相手との示談を待たずに、当面の補償が得られる画期的な保険なのです。ただし、No Fault保険には慰謝料や逸失利益は含まれません。この部分は簡単に決まるものではなく、多くは交渉や訴訟の末に決まるものです。その金額も人によって差が莫大です。よって、保険会社が安易に自社基準で決定するに馴染まないのです。ところが、日本の人身傷害は、これらを入れてしまった・・これが、支払保険金算定の問題(訴訟基準差額説、人身傷害基準差額説)として残ってしまったのです。
私は、人身傷害はその商品開発自体に問題があったと思っています。
実は、保険会社の立場も理解できるのです。保険会社はそもそも人身傷害を補償保険として売りたかった、ところが勢い余ってか、慰謝料や逸失利益など賠償保険と重なる項目を混ぜてしまった・・。
それでも、事故の責任が100%自分にある事故や自爆事故の場合、今までは補償保険である自損事故保険のみ、あとは、自身で加入している傷害保険や共済しか頼れなかったところ、人身傷害で治療費や休業損害が実額で確保でき、さらに、自分が悪いのにも関わらず、慰謝料や逸失利益など賠償的なものまで払ってくれる・・これは画期的なことです。
また、事故の加害者が無保険で(あるいは、最悪の無自賠)あっても、人身傷害で保障されるのです。無保険の加害者はたいてい支払能力がありません。今までは相手の自賠責、あるいは政府の保障事業への請求が残された手段でした。被害者は苦労して、その手続きをするしかなかった・・しかし、人身傷害が(裁判で勝ち取る額より低いとはいえ)慰謝料や逸失利益を払ってくれるのです。
つまり、この2ケースの場合、人身傷害は被害者を助ける新たなセーフティーネットになったのです。その大恩ある保険会社さんに向かって、「慰謝料・逸失利益を裁判基準で払って」は、図々しいにも程があると思います。
私が提唱しているのは契約者・保険者(保険会社)双方にフェアな契約、納得のいく支払基準にして欲しいことです。
やはり、加害者が存在する場合、相手が無保険の場合、自損事故の場合、支払基準を分けるわけにはいかないでしょうか。
それは、以前の記事 ⇒ 人身傷害特約 支払い基準の変遷 ⑱ 最終回 誰がために金は成る?
(1)損害の総額は当社の基準で算定します。
(2)相手からの回収金、もしくは相手との交渉で決まった総損額が(1)の金額を上回る場合、弊社と協議の上、(1)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。 ただし、自損事故の場合、相手からの回収金がない場合は、この限りではない。
現在、人身傷害の支払基準は各社、一応の落ち着きをみせたようです。
平成24年2月の最高裁判決「裁判基準差額説」を受けて、敗訴となったあいおいさんがいち早く約款を現在に近い内容に改定し、各社もそれぞれ知恵を絞って(?)、人身傷害基準での支払で済ますように工夫した結果です。他の2グループを復習します。 ○ 東京海上日動さん
なお、賠償義務者があり、かつ、判決又は裁判上の和解において、賠償義務者が負担すべき損害賠償額がこの人身傷害条項の別紙の規定と異なる基準により算定された場合、であって、その基準が社会通念上妥当であると認められるときは、自己負担額(被害者の過失分)の算定にあたっては、その基準により算定された額を(2)の規定(=人身傷害の支払保険金)により決定された損害額とみなします。 私が読んだ保険約款でもっとも難解な文章です。弁護士先生も理解に苦しんでいます。
この条項で、「人身傷害を先行し、後に裁判で勝ち取った額から返す分は、裁判で決まった総額を基に計算します」と、裁判基準差額説に適応させましたが、判決で宮川判事が宿題とした・・「人傷か賠償か、請求の順番で被害者が得る保険金が変わるのはおかしい」という問題は解決していません。完全にスルーされています。事実、この数年間、連携弁護士はがいくつかの事案で、賠償先行の末、人身傷害に被害者の過失分を請求したところ、「上の規定は求償の場合であって、賠償先行し、そこで決まった裁判基準額を丸々払う規定など約款のどこにもありません」とはねつけられています。約款解釈ではそうなりますが、これは約款の不作為であって、納得できないものです。 ○ 三井住友さん
第5条(損害額の決定)
(2)賠償義務者がある場合には、保険金請求権者は、(1)の区分(=傷害、後遺障害、死亡)ごとに<別紙)(=人身傷害支払基準)に定める基準により計算された金額のうち、賠償義務者に損害賠償請求すべき損害に係る額を除いた金額のみを当社が人身傷害保険金を支払うべき損害の額として、当社に請求することができます。
太字は、つまり、自身の過失分を指します。私達はこの条項を「過失分限定払い」と呼んでいます。この条項によって、人身傷害に先に請求しても、人身傷害発売以来の売りだった「夢の(過失減額のない)全額補償」はダメになったのです。三井住友さんやあいおいニッセイ同和さんは、人身傷害そのものを改悪させたと言っていいでしょう。さらに、
① 当社と保険金請求者との間の協議
② ①の協議が成立しない場合は、当社と保険金請求者との間における訴訟、裁判上の和解または調停。 支払保険金はこの2行で決定すると・・つまり、「加害者との裁判で決まった額を認める」とはしていません。まず、協議、そして、まとまらなければ、「うちに保険金請求訴訟を起してね」と居直り約款で締めくくっています。なんとしてでも裁判基準では払いたくない強い信念を感じます。この点のみでは、損J日興は潔いと思います。 そして、両グループとも、無保険車傷害保険は人身傷害に組み込まれ、支払基準を同じくしています。
つづく
昨日の約款条項を、損保ジャパン日本興亜さん(平成30年1月版)から確認してみましょう。
第6条(損害額の決定)
(3)(1)および(2)の規定にかかわらず、賠償義務者があり、かつ、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって、判決または裁判上の和解において(1)および(2)の規定により決定される損害額を超える損害額が認められた場合に限り、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって認められた損害額をこの人身損害条項における損害額とみなします。 ただし、その損害額が社会通念上妥当であると認められる場合に限ります。
※ 緑字は弊社が定める損害算定基準に従い算定された金額=人傷基準 を指しています。 普通なら、ここで、「あぁ、ついに裁判基準を認めてくれたのだな」と思ってしまいます。 ところが、以下の8条で、「ただし、限度額があります。それも人身傷害の基準額です」と・・ 第8条 (支払保険金の計算)
毎度お馴染み、人身傷害ウォッチャーの秋葉です。 久々にこのシリーズを続けます。 以前まで・・・人身傷害の約款改悪シリーズ 夢の全額補償が破壊された ① 今回の問題ですが、以前から損保ジャパン日本興亜のグループは賠償先行でも人傷先行でも、裁判となれば、その基準を総損害額とみなす規定であることを評価して、「24年2月最高裁判例に応じた約款改定をして、潔い」としました。しかし、ある約款条文を見落としていました。これは既に、あいおいニッセイ同和さんが採用していた、上限規定です。これについては過去記事をご覧下さい。 人身傷害の約款改悪シリーズ 夢の全額補償が破壊された ③ この③で指摘していることは・・・「人身傷害の損害額について、裁判で決まった額を総損害額と認めますが、支払う人身傷害保険金は限度があり、その限度額は人身傷害基準で計算された額です」との条項によって、以下の不都合が起きることです。
自身に過失が大きい場合、例えば80:20ですと、裁判で相手から20%を回収し、次いで自契約の人身傷害に80%を請求しても、人身傷害の限度額規定によって、この裁判基準の80%は確保できない、つまり、総損害額の全額確保はできない問題です。
これが、損保ジャパン日本興亜の約款にも含まれていたのです。書き方が巧妙で、気付くのが遅れました。この条項は、日本興亜と合併を機とした約款改定(平成26年7月1日~27年9月30日)から確認できます。この約款によって、裁判基準額で人身傷害(無保険車傷害)を回収する方法が潰されています。具体的に説明します。
加害者が無保険で過失割合は0:100、相手が一方的に悪い事故です。この場合、相手からの回収は諦め、自契約の人身傷害に請求することが、残念ながら普通のことでした。多くの交通事故相談でも、そのように回答しているようです。しかし、私達が以前から推奨してきた策は、「まず、相手と裁判して、(すんなり回収できれば解決ですが)、相手の支払可能の有無に関わらず、判決額を確保します。
そして、その額を人身傷害、あるいは無保険車傷害に請求するものです。
この、いわゆる宮尾メソッドを全国の弁護士に流布してきました。
人身傷害の約款では裁判基準で支払うか否か、長い間、不明瞭な記載が続きました。これが平成24年2月の最高裁判例で定まったのですが、定まったのはあくまで、人身傷害の先行請求後の求償額についてです。これを受けて、各社、約款改定しましたが、どうもスッキリしません。東海のグループは求償規定のみで、賠償先行については記述無し(つまり、無視?)、三井住友のグループは「協議」で逃げて(?)います。
また、無保険車傷害保険が人身傷害に併存しており、その支払基準は、そもそも「まず、保険会社基準で計算しますが、裁判となればその額を支払う」としていましたので、支払基準のダブルスタンダード状態だったのです。
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先日の代理業協会のセミナーから、反響が大きかったテーマを少し取り上げます。 私の保険会社での研修時代は、SC配属時も含め、徹底的に知識を詰め込まれましたが、何故か後遺障害の知識だけはポッカリ穴が空いたように、学ぶ機会がありませんでした。あたかも後遺障害だけを避けているかのようです。
また、ある代理店さんから聞きましたが、「秋葉事務所は保険会社の支払を増大させる、リザルトを悪化させる立場の人間」であり、拒絶感をもっているそうです。しかし、講義を聴いた皆様はお分かりと思います。保険とは適正な支払と、それに応じた掛け金によって、制度が保たれているものです。支払いの増大は、掛金値上げ、あるいは補償内容の縮小で調整するものです。本来、保険会社が払い渋りをする必要などないのです。それなのに、保険会社や代理店さんが、自らのお客様に対して後遺障害を秘匿し、不当に低い支払いをすることは、むしろ、このバランス・均衡を阻害するものです。
そして、真にリザルトを悪化させる者は不正請求者のはずです。この者達が共通の敵であり、保険会社や代理店さん、そして交通事故に携わる者すべてが、協力してその排除に注力すべきなのです。適正な保険金支払と、リトン・ベイシス・ロスレシオから適正な保険料が算出されること、これこそ、人智が生み出した保険と言うシステムだと思います。
排除すべき被害者御三家
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(Q1) 会社で禁止されているマイカー通勤で交通事故受傷したのですが、通勤災害の適用はできますか?
(A) 通常用いられる交通方法である限り、通勤災害となります。 労災保険法7条の2では、「通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路および方法によって往復することをいい、業務の性質を有するものを除く、」 と規定しています。つまり、勤務先がマイカー通勤を禁止していたとしても、先の要件に合致しているか否かで判断がなされます。したがって、労災はOKですが、会社は嫌な顔をすると思います。やはり、会社のルールも守るべきでしょうか。 (Q2) 出張中の事故? 弊社の社員の井上さんが鹿児島に出張しました。駅近くの酒屋で土産の焼酎を物色中に、酒屋の店舗に運転を誤って飛び込んだ自家用車の衝突を受け負傷し、現在入院を続けています。 土産物の物色中は、厳密には業務ではありませんが、業務災害の適用は可能でしょうか?
秋葉事務所では、交通事故被害者が労災も併せて請求できる場合、積極的にお手伝いをしています。自賠責で揃えた書類のコピーが使えますので、その申請作業など、行きがけの駄賃に等しいものです。
後遺障害は労災と自賠、両方に請求はできますが、丸々二重取りはできません。どちらか先に入金した場合、片方は重なる部分を計算・控除します。これを、支給調整と言います。
問題は労災7級以上の重傷者です。7級以上は一時金ではなく、年金払いとなりますので、支給調整の計算が困難です。そこで、特別給付金などの一時金は即時に支払われますが、年金は数年間、支給据え置きの措置となります。この据え置き年数は長らく3年でしたが、最近、改正されました。詳しくは、以下、労災の文章を読んでみましょう。(通達を原文のまま転載しました)
{現状}
○ 災害事故が第三者の行為によって生じた事案については、被災労働者が、労災保険の請求権と第三者に対する損害賠償請求権を同時に取得する場合がある※。
※ 例えば、仕事中の交通事故について、被労働者が、労災保険の請求権に加え自賠責等の損害賠償請求権を取得する場合 ○ 被労働者が第三者から損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険供給を控除することができるとされており、現行では控除を行う期間を3年間としている※。
〔控除期間が3年である理由〕
○ 労災保険法は被害者の保護を第一の目的としていることから労災保険給付の対象となっている災害について多年にわたる控除を行うことは労災保険法の制度の趣旨に反すること。 続きを読む »
今月号の通信で特集した「労災」ですが、よくまとまっていましたので、こちらにも掲載したいと思います。 労災は大きく分けて、「業務災害」と「通勤災害」です。補償内容については、労働基準法に「災害補償」に関する条文が定められています。条文に沿って、補償内容を確認しましょう。 【1】補償内容(第8章 災害補償) (1)療養補償(第75条)
・・・労働者が業務上、ケガもしくは病気にかかった場合、その治療費を支払います。
(2)休業補償(第76条)
・・・ケガや病気での療養で仕事を休んだ場合、賃金の60/100(平均賃金)を休業4日目から支払います。 (3)障害補償(第77条)
・・・ケガや病気で障害が残った場合、その程度(1級~14級)に応じて、補償金がでます。7級以上の重い障害には年金での支払いとなります。
(4)遺族補償(第79条)
(5)葬祭費(第80条)
・・・死亡の場合、平均賃金の1000日分が支払われます。 葬祭費は平均賃金の60日分。 【2】労災使用のメリット (1)全額補償される!
・・・健康保険のように、治療費の自己負担はありません。又、交通事故の場合で、自己にも責任がある場合、過失減額がありますが、労災は過失割合に関係なく100%支払われます。
週末、伊那から東京に戻りましたが、休むまもなく山梨へ。写真の通り、冠雪の富士は右頬を赤らめています。
今回のテーマは、原点に戻って、「交通事故・後遺障害のすべて」としました。概論的な話は久しぶりです。それでも、聴講される皆様、あるいは交通事故にまつわるすべての人達に問題を突きつけた感があります。
被害者救済との言葉は美辞麗句です。しかし、何事も光と影があるものです。とくに影の部分、問題点を共有し、皆で考えていくことが大事ではないでしょうか。 続きを読む »
【事案】
バイクで直進中、左折自動車に巻き込まれ受傷、右腕の肘(橈骨骨頭部)と第3指(中指)末節骨を骨折したもの。その後、尺骨突き上げ症候群を併発、手首のTFCC損傷の診断名が加わった。
【問題点】
手関節の専門医を受診したところ、手術適用も示唆された。しかし、MRI上、TFCC損傷は自賠責が認めるほどの所見はない。橈骨骨頭部の骨折から橈骨と尺骨のバランスが崩れ、尺骨の突き上げが起ることは理論的にはありうる。ただし、患部(TFCC)に明確な損傷が必要であり、また、手術をしなければ「その程度のケガ?」と判定されかねない。
【立証ポイント】
骨折を伴うケガは信憑性を得易いが、TFCC損傷はかなりレアな傷病名であるにも関わらず、ネット(おそらく火元は「交通事故110番」)でその存在が拡散したものと言える。専門医の確定診断もMRIだけに頼らず、かなり慎重に検証している。
自賠責での12級は明確な画像所見を要求する。一方、労災ではそれほどでもなく、専門医の診断名や顧問医の診断から12級を得易い。自賠責でコケたら、労災で12級認定を目指すプランとした。
結果として、自賠は14級判定に留まった。その後、労災申請を行い12級を確保。(あいまいな)TFCC損傷は、自賠と労災の審査基準の違いを明確に感じる傷病名でもある。
※ 併合の為、分離しています
(平成28年6月)