近時の認定経験から   ② 距骨骨折について

 距骨とは、かかとの骨(踵骨)と、足のすねの脛骨、腓骨との間にある足首の骨です。この距骨を中心に足首(足関節)を曲げますので、歩行や背伸び等の運動でスムーズに足を動かすために重要な役割を持ちます。  距骨を骨折した場合、少し骨が欠けたような骨折だと、ギプス固定して、骨の癒合を待つ場合があります。軽い骨折の場合、症状固定時期に痛みやしびれなどの神経症状が残存している場合、14級9号が認定される可能性があります。他方で、骨折がひどい場合にはプレートやネジで固定して癒合を待つ場合があります。

 このような重い骨折の場合、事故前の距骨と比較して、多少変形や偽関節が生じてしまうことがあります。また、距骨は筋肉などとつながっておらず、血流が他の骨に比べて非常に悪く、骨折がひどい場合は壊死する恐れもあります。

 距骨の変形や偽関節、壊死等によって、足首の動きが悪くなることがあります。また、プレートやネジで固定した際に、ひっかかって足首の動きが悪くなってしまうことがあります。症状固定時期に足首の動きが悪くなってしまっていた場合、可動域制限で等級が認定される可能性があります。但し、それはリハビリ等の治療努力をした場合で、それでも可動域制限が残存した場合に限ります。(骨折状況によってはリハビリそのものが無理な方もいらっしゃいますので、治療内容はケースバイケースです。)

※ 過去の相談者の中には可動域制限で等級が認められる話を聞いて、リハビリをさぼろうとする人がいましたが、リハビリをさぼって出来上がった可動域制限は単なる筋拘縮によるものにすぎず、器質的損傷による可動域制限とは認められません。どのようなことがあっても治療をさぼるようなことは絶対にしないで下さい。急性期の治療が後の後遺症を左右します。

 仮に、可動域制限が残らず、治療が良好に進めた場合は、画像所見が認められ、かつ痛み等の神経症状のみが残存した場合、12級13号が認定される可能性があります。  

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【事案】

スーパーマーケットの駐車場を歩行中、歩行者に気付かずに前進してきた前方不注意の車に接触、手関節と足関節を痛めた。以後、捻挫にしては長期の治療・リハビリが続いた。

【問題点】

当事者間の話し合いでその場を収めてしまったため、事故として受理されておらず、事故証明書もなかった。また、相談にいらしたときには、後遺障害診断書が既に病院から保険会社に直接提出されており、病院側からも、「もう来なくていい。」と断られていた。

しかも、診断名は手首、足首の単なる捻挫である。正直、後遺障害認定は無理と思った。

【立証ポイント】

正直、後遺障害認定は無理と思った。それでも最善を尽くすべく、保険会社から後遺障害診断書を回収した。予想通り不備だらけであった。診断書の追記依頼を行う前までにリハビリ継続を指示し、医師や理学療法士とのコミュニケーションを取らせて関係を修復させたのち、院長先生に協力を仰いだ。診断書に追記頂き、今度は万全の状態で被害者請求を行った。  

認定結果は、受傷から一貫した治療が評価され、奇跡的に14級となった。

※ 併合の為、分離しています

(平成30年1月)  

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