上腕神経叢(じょうわんしんけいそう)とは、頚部から鎖骨下を通り、上肢まで伸びる神経の束です。 上腕神経麻痺は麻痺の程度によりますが、軽度では上肢のしびれ、重度では肩~指先の自動運動が失われます。上肢、手の運動は、頚髄から出ている5本の神経根、C5頚髄神経根からT1胸髄神経根を通過して、各々の末梢神経に伝えられており、左鎖骨下動脈部を指で圧迫すると、左上肢が痺れてくるのは鎖骨下動脈の下に、上肢に通過している5本の上腕神経叢が存在しているからです。 神経の損傷が微細、もしくは絞扼性(こうやくせい:神経が締め付けられる)の場合は、リハビリや手術で回復の目処が立ちますが、神経の切断や引き抜き症候群(神経が引っ張られて千切れてしまう)の場合は、手術での改善も難しく、腕は一生動かなくなり、「1上肢の用廃=5級6号」が認定される深刻な後遺障害となります。
一定の回復が見込める12級レベルですが、過去に一度、上腕神経麻痺を担当しました。当時のバンドメンバーです。
<片腕のドラマー>
メンバーの上腕神経麻痺に入る前に・・・。ハードロック、ヘビメタファンにはおなじみ、80年代英国を代表するバンド、デフレパードをご存知でしょうか。
ツインギターの凝ったアンサンブル、美しいコーラスワークからヘビメタファンに留まらず、幅広い人気を誇り、私もアルバム「ヒステリア」が大のお気に入りでした。 このバンドと交通事故に何の関係が?とお思いでしょう。それは、ファンなら誰でも知っている、ドラム担当のリック・アレンの自動車事故による片腕切断です。1984年、リック運転の自動車が壁に激突・横転しました。後続車に煽られていたようですが、自損事故です。ちなみに、片腕の欠損による後遺障害は「1上肢を肘関節以上で失ったもの=4級4号」となります。
アルバム「ヒステリア」製作開始直後の事故でしたので、バンドもレコード会社も大困りです。当然、代わりのメンバーで製作を進めるところ、メンバー一同「ドラムはリック以外いない!」と、解散を辞さないほどの強い希望から、アルバム製作を中断し、リックの復帰を待ちました。
リックもメンバーの心意気に応え、わずか1ヶ月で退院しました。そして、当時の楽器メーカー、シモンズに片腕で叩けるドラムセットを特注しました。シモンズもバンドの意気を感じ、リック専用セットを急造しました。こうして、アルバムの製作が再開され、かの大ヒットアルバムが生まれたのです。その第一弾シングル「アニマル」のPVで片腕でドラムを叩くリックと、シモンズのドラムセットを観ることができます。