【事案】

バイクで交差点を直進中、対抗右折自動車と衝突した。主な診断名は急性硬膜下血腫、左尺骨神経麻痺、左脛骨高原骨折、左腓骨骨折。

尺骨神経は手術で縫合、知覚障害は残るが運動性を取り戻した。左脚は脛腓骨の骨折により腓骨神経麻痺が残った。また、左上肢・下肢の傷跡は醜状痕が残った。脳障害については物忘れ、注意力低下、遂行能力の低下が目立った。

【問題点】

血腫はほどなく消失し、医師も継続的な検査・治療を行わなかった。画像上、「脳への器質的損傷なし」、また「意識障害なし」、これでは自賠責での高次脳機能障害認定は絶望的。 また、被害者の業務歴、学習歴から知能が高く、一見、障害が分からない。検査でも知能系の数値が平均より高く、障害が見えづらいケースである。

受傷から2年後、高次脳機能障害の評価ができる拠点病院にて専門医が検査を実施、高次脳機能障害と診断されたが、案の定、自賠責保険での高次脳機能障害は否定された。認定結果は上肢知覚障害、腓骨神経麻痺、醜状痕等の評価で併合9級止まり。

それからさらに2年後、方向性が定まらない状態で受任となった。 絶対に諦めるわけにはいかない。被害者との面談、ご家族の聞き取りから、本件はMTBIではなく、高次脳機能障害であると確信したからである。高次脳機能障害は訴訟での認定を目指すことになった。

【立証ポイント】

まず、受任していただける弁護士探しからとなった。大御所弁護士が断る中、当時、独立したての弁護士先生が引き受けて下さった。 逆転勝利のためには徹底的な準備と新たな医証が必要である。手持ち資料から訴訟認定したケースの訴状等を準備、弁護士に託した。新たな医証としては別の専門病院で神経心理学検査を一からやり直し、記憶障害、注意・遂行能力の低下を示すデータを揃えた。 また、奥さんから事故前後の変化について徹底的に聞き込み、時間をかけて詳細な記録を作成した。些細な情報ですら漏らすことは出来ない。これは後の口頭弁論に活かされる資料となった。 腓骨神経麻痺については足関節の可動域制限しか認定されていなかったので、足指の可動域制限を追加計測した。これで負けても併合等級は一つ上がる計算となる。

裁判は相手保険会社の強硬な姿勢で長期化、しかし、2つの専門病院の検査及び専門医の診断から裁判官は脳障害の存在に肯定的であった。和解の内容は高次脳機能障害9級の提示、相手保険会社も9級なら飲むよう。しかし、これは腓骨神経麻痺の追加評価からでも上げられる等級である。勝ったとは到底言えない。連携弁護士は徹底抗戦を決断し、交通事故裁判では異例の証人出廷(本人と奥さんの口頭弁論)となった。裁判官も実際に被害者を観察したかったよう。

結果、相手保険会社が根負けして7級を容認、併合6級での勝訴判決に近い和解となった。事故から10年、受任から4年を経ての勝利であった。 20140508_9 

(平成27年9月)  

続きを読む »

【事案】

交差点を歩行横断中、対抗右折自動車に跳ねられ受傷。右前頭葉脳挫傷、右眼窩吹抜け骨折、右脛骨プラトー骨折となった。

【問題点】

最初に依頼した弁護士は高次脳機能障害の知識に乏しく、後遺障害診断書の1枚のみの記載で十分との認識であった。主治医は「他にも必要な書類があるのでは?」と心配したが、「必要ない」との返事。

不安に思った奥さんから当方にセカンドオピニオンとして相談を頂いた。そこで必要な手順、解決までのロードマップを説明した結果、ご本人ご家族は既契約弁護士に払った着手金を無駄にしてでも依頼を切り替える決心となった。

【立証ポイント】

高次脳をメインに追っかけている間、右額にうっすらと線状のキズに気付いた。聞くと事故でのキズとのこと。薄くなっているが計測すると3cmを超えている。早速、最初に救急搬送された病院で処置をした科、医師を探した。結局、眼科の先生にカルテの記録から診断書の別紙に線状痕として計測・記載をしていただいた。

写真を添えて提出後、おなじみ自賠責調査事務所から面接の要請があり、連携弁護士が立会い無事に12級を確保。障害を余すところ無く等級認定しなければなりません。

※併合のため分離しています。

(平成27年8月)

続きを読む »

【事案】

交差点を歩行横断中、対抗右折自動車に跳ねられ受傷。右前頭葉脳挫傷、右眼窩吹抜け骨折、右脛骨プラトー骨折となった。

【問題点】

最初に依頼した弁護士は高次脳機能障害の知識に乏しく、後遺障害診断書の1枚のみの記載で十分との認識であった。主治医は「他にも必要な書類があるのでは?」と心配したが、「必要ない」との返事。

不安に思った奥さんから当方にセカンドオピニオンとして相談を頂いた。そこで必要な手順、解決までのロードマップを説明した結果、ご本人ご家族は既契約弁護士に払った着手金を無駄にしてでも依頼を切り替える決心となった。

【立証ポイント】

受任時には既に視力検査、調整能力検査を済ませていた。右視力は「S1」となってほぼ失明状態、視野は失明では検査の必要なく、また左眼の調節機能の低下も年齢(50歳オーバー)から障害評価とならない。後遺障害診断書だけではなく、別紙「眼科の各種検査の所見等について」を追加、これら検査結果を整理した。

オートレフ眼鏡屋さんでおなじみ、オートレフ

※併合のため分離しています。

(平成27年8月)  

続きを読む »

【事案】

交差点を歩行横断中、対抗右折自動車に跳ねられ受傷。右前頭葉脳挫傷、右眼窩吹抜け骨折、右脛骨プラトー骨折となった。 回復後も短期記憶障害、性格変化、易疲労性が見られた。

【問題点】

最初に依頼した弁護士は高次脳機能障害の知識に乏しく、後遺障害診断書の1枚のみの記載で十分との認識であった。主治医は「他にも必要な書類があるのでは?」と心配したが、「必要ない」との返事。また、性格変化を心配する奥さんに対しても「性格が穏やかになって良かったじゃないですか」との対応。挙句に「奥さんは口を出すな」・・とにかく早く相手保険会社の事前認定に進める姿勢であった。

不安に思った奥さんから当方にセカンドオピニオンとして相談を頂いた。そこで必要な手順、解決までのロードマップを説明した結果、ご本人ご家族は既契約弁護士に払った着手金を無駄にしてでも依頼を切り替える決心となった。

【立証ポイント】

主治医は別件で何度か面談したことがあったので、スムーズに診断書の追記、追加書類に応じていただけた。奥様と日常生活状況報告書を綿密に打合せして作成、特に性格変化の観察・記載に注力した。さらに眼科へ追加書類を依頼し、顔面醜状痕の計測・記載も追加した。

高次脳機能障害の立証に家族の協力は不可欠である。奥様には大いに口を出してもらった。結果、必要なことをしっかり抑えて、高次脳機能障害は想定どおりの7級とした。前任の弁護士のままでは9級の恐れもあった。当然だが視力障害と醜状痕による併合(結果、併合5級)も無かっただろう。

※併合のため分離しています。

(平成27年8月)

続きを読む »

win

 交通事故に遭われて被害者となった方は、まず、怪我を治せるかどうかが気になるかもしれません。しかし、それと同時に問題となるのは、治療費や収入についてではないでしょうか。

 これまでは後遺症(後遺障害)の申請で等級を得た上でのお金の得方を説明していきました。

 しかし、後遺症(後遺障害)の申請に行きつく前に費用面で満足に治療を受けられない場合もあります。

 例えば、加害者が自賠責以外の保険に入っていなかったり、最悪、自賠責にも入っていなかったりする場合(日本人であればほとんどこのような場合はありませんが、外国人の場合、未加入の者もおりました。)もあります。仮に、加害者が任意保険に入っていても、被害者の過失が大きくて一括対応してくれない場合等、治療費が賄えない場合があります。   c_y_164  怪我が軽ければ自腹でも大丈夫かもしれません。しかし、怪我が重い場合もあり、金銭的に治療が受けられず、また、もっとひどい場合、仕事ができず、収入がなくなり、ご自身の生活が立ち行かない場合もあります。

 基本的に、賠償関係は弁護士が最後(等級を獲得してから)にまとめてするものです。しかし、これらのような事情の場合、後遺症(後遺障害)申請に行きつく以前の問題です。

 これまでに説明してきた内容と一部重なりますが、次回から後遺症(後遺障害)の申請前、ないしは申請中の段階で治療費等のお金を先取りする方法ついてまとめていきたいと思います。  

続きを読む »

 (業務日誌が遅れて投稿されていますので日付が少しずれています)月曜日が体育の日で、今月も3連休があります。もちろん3日も休んでいられません。土曜日は事務所の電話回線の工事でした。

 工事に立会いしている時、ふと窓に目をやると銀座のビルの谷間から見慣れない真っ黒い煙が立ち上ってきました。これはもしや火事?と思ってしばらく見ていたら、案の定、消防車が数台集まってきました。ニュースでは幸い軽傷者2名、そして類焼せず間もなく鎮火したようです。これから空気が乾燥してきますので火の元には注意が必要ですね。

 火事つながりですが、実家の火災保険が今月満期を迎えます。契約先は損保ジャパン(当時は安田火災?)、20年ほどの長期契約でしたが、近時の改定で長期契約は10年が限度となるそうです。通常、契約は1年毎ですが、数年まとめての契約ですと、長期率(割引)が適用されてお得なのです。

(例)1年間契約:50000円 ⇒ 

 500000円×10年×長期率0.9=45万円(1年あたり45000円となる)

 ちなみに自動車保険も主要社では3年程度の複数年契約があります。現場の代理店さんは自動車保険の複数年契約をそれ程歓迎していないように感じます。やはり、毎年こまめに調整すべきだからでしょうか。対して火災保険の場合、毎年そう変化はありませんので長期が望ましいと思います。他社さんも10年までなのか?今度、各社の代理店さんに聞いてみようと思います。

0151010at20_t  火事はマガジンハウスさんの向かいのビルのようです。数件先に行きつけのクリーニング屋さんがあります。そういえば、夏物はまだ出してなかった。週明けには出そう。  

続きを読む »

 神経系統の障害は諸々の症状を包括的に判断します。例えば脳損傷となり、記憶障害が9級程度、めまいが12級程度、排尿障害が11級程度・・これらを併合せず、ひっくるめて総合判断で7級とするような・・。これは自賠責が労災認定基準の「神経系統の障害を労働能力の喪失程度から判定する」ことを基にしているからです。

 さて、本件盛りだくさんの障害を明らかにしましたが、高次脳機能障害まで立証し切れませんでした。まず、自覚症状(高次脳の場合、家族の観察)がどの程度なのかが出発点です。初回の本人面談で私は高次脳を予断しました。しかし、続く家族の観察から障害の表出が乏しく、最後まで疑問のままでした。つまり、本件は予断をはずしたようです。こうして高次脳未満は「高次脳崩れ」の12級13号確保が目標になります。  本件、提出書類から状態を見極めた自賠責・高次脳審査会の慧眼には恐れ入りました。  

12級13号:脳挫傷・14級9号:頬骨骨折・12級相当:味覚障害・13級5号:歯牙欠損・14級相当:嗅覚障害(50代男性・神奈川県)

【事案】

自転車で直進走行中、前走バイクが急転回し、衝突したもの。頬骨骨折により、顔面に神経性疼痛、嗅覚・味覚の異常も生じた。また、脳挫傷があり頭痛やめまいに悩まされる。その他、歯を数本折った。 リハビリ後も完全回復とならず、現場の仕事から内勤に転任を余儀なくされていた。

【問題点】

相談会で高次脳機能障害の精査を必要と感じた。早速、主治医に面談し各種検査を行ったが、家族からの観察に比して整合性のある結果とならかった。果たして脳障害はあるのか?迷いの中、作業が進んだ。

高次脳機能障害で一くくりにできれば良いのだが・・・高次脳が否定された場合、はっきりと数値に出る検査のない頭痛、めまい・ふらつき、顔面の痛み、これらを神経系統の障害としてまとめる作業となる。

【立証ポイント】

味覚・嗅覚はおなじみの検査を実施するのみ。歯については既存障害歯と事故で欠損した歯を分けて把握する必要がある。歯科医と打合せし、XP画像を預かり、専用診断書に記載頂く。 結果、味覚喪失で12級相当、嗅覚減退で14級相当とした。歯については事故前からの障害歯と新たに折れた歯を合計、現存障害として13級5号(本件の場合、併合ルールの優位により加重障害とならず)。 c_g_m_3 続きを読む »

 頬骨骨折、肩腱板損傷・・・それ程多くない傷病名です。しかし、実績ページを観ていただければお分かりと思いますが、頬骨骨折も肩腱板損傷も私の事務所ではレアな傷病名ではありません。実績があるから的確な立証作業が可能となります。

 本件は当時、新人の補助者山本が終始すべてを担当、不利な状況を覆して見事に立証を成功させました。事務所の実例資料と秋葉の指示があれば大丈夫。これが実績蓄積の力なのです。   20101209_2-300x237 20141126_2

12級13号:頬骨骨折(30代男性・東京都)

【事案】

自転車走行中、交差点の横断歩道上で対抗自動車が右折進入して衝突した。右頬骨を骨折し、プレート固定術を受けた。

続きを読む »

 交通事故外傷のおよそ80%が捻挫・脱臼、そして挫傷です。その中で後遺症が残るようなケガは10%にも満たない数です。後遺症自体がレア、珍しいケガなのです。そして、後遺障害と認定される傷害名も60%近くがおなじみの「むち打ち」となります。

 今回取り上げるシリーズは後遺障害の中でも3%以下のケガを特集してみましょう。 c_g_sp_8

14級9号:股関節脱臼(20代女性・埼玉県)

【事案】

自転車でT字路を右折のところ、右方からの自動車と衝突、転倒したもの。歩行不能で救急搬送され、診断は股関節脱臼。搬送先では手に負えず、転院先にて股関節を数人がかりで徒手整復した。

【問題点】

レントゲンでも股関節は問題なく整復されている。リハビリの経過もよく、歩行できるまで回復した。しかし、痛み、違和感はそう簡単に消失するものではない。

【立証ポイント】

依頼を受けて、まずCT検査を行った。すると股関節の関節内にほんのわずかながら骨片を発見した。その存在を放射線科医に読影頂いた鑑定書を添えて自賠責審査に提出した。器質的損傷が画像上確認できるのであれば12級がターゲットとなる。

しかし、結果は14級に留まる。「脱臼後の整復および骨癒合は良好であり・・」との判断。骨片には触れてもこない。それでも疼痛・回復の程度や依頼者の意向を踏まえて14級を容認した。

このように立証側と審査側は画像を巡ってギリギリの攻防をしているのです。今回は勝ちを譲りましょう。

続きを読む »

 高次脳機能障害を抱える家族の苦悩は当事者にしかわからないことばかりです。一見、事故から回復して障害など無いように見える被害者さんもおります。すると、能力の低下や障害ゆえのミスを職場や近所、友人など周囲が理解できないのです。本件は非常に深刻で、情動障害によって退院後から様々なトラブルが起きています。地域全体の理解・協力が無ければ生きていけないと言っても過言ではありません。

 まだ、事故は解決していませんが、やがて賠償交渉(裁判)は終わるでしょう。しかし、被害者と家族にとって完全解決などないのかもしれません。深刻な障害者とその家族にとって、障害と向き合うことは常に現在進行形なのです。  

3級3号:高次脳機能障害(10代女性・長野県)

【事案】

直進道路の左側を自転車で走行、右側へ横断した際、後続の自動車に衝突された。その際、右側頭部を自動車フロントガラスに打ちつけ、次に道路に飛ばされて左側頭部を路面に打ちつけた。意識不明の重態で救急病院に搬送され、緊急手術となった。診断名は主に右側頭骨骨折・右急性硬膜外血腫と左急性硬膜下血腫、左右両側の脳損傷である。

数度の開頭手術、長期の理学療法を続けたが、知能低下、短期記憶障害、失語(ウェルニッケ型)、注意・遂行能力低下、右片麻痺(右足関節・自動運動不能)、学習障害、情動障害が残存した。

最後の手術の直後、母と相談会にみえられた。

【問題点】

学習障害によって普通校の授業は不可能、知能は小学生低学年~幼児レベルに低下した。情動障害は特に深刻で、体力の回復と共に易怒性が強く表出して凶暴な行動にでるようになった。加えて幼児退行、羞恥心の欠如がみられ、周囲とのコミュニケーションが困難となった。女子高生としては相当に悲惨な状態である。

母子家庭なので受任後は仕事を持つ母親の合間に合わせて、何度も病院同行を重ねることになった。当初は私の仕事について、病院側の理解が得られずにやりづらい状況であった。さらに、本件最大の問題は現在進行形で情動障害が変化・重度化している点である。体力の回復によって、また、普通の年齢相応の情緒不安定も加わり、家庭内で暴れだすと手に負えずに警察を呼ぶような事態に発展する。何度か心療内科へ入院となり、その都度、症状固定とできない状態が続いた。

【立証ポイント】

診療を受けたすべての科の医師と面談した。主治医の脳神経外科医はもちろん、言語聴覚士、作業療法士、整形外科、リハビリ科、心療内科、ついには院長と面談し、すべての記録をまとめた診断書類を完成させた。泊まりも含め、長野へは10回も足を運ぶ結果となった。

神経心理学検査は言語系、知能系を中心に選択したが、知能・学習能力の低下から下位数値となった。下肢の麻痺については足関節、足趾(足指)を正確に記録した。日常生活状況は母親と作成、エピソードをもらさず文章化、看護記録なども添付した。事故前後の学力低下を克明にするため、高校の担任教師、(事故後の)支援校の担任教師にそれぞれ報告書を依頼した。

一番の仕事は、母親と深夜も含めてこまめに電話で連絡を取り合ったことです。高次脳機能障害を抱える家族へのメンタルケアは非常に重要です。(過去、家族が心身症になり自殺、自殺未遂となった件を経験しています。) 続きを読む »

 本件も受傷・認定部位は盛りだくさんながら、肝心の高次脳機能障害が認められず、10年戦争となった案件です。

 画像所見や意識障害が明確でなければ、労災・自賠責の高次脳機能障害の認定はありません。しかし、中には画像所見が不明瞭、もしくは意識障害の記録が見逃されてしまった被害者も存在します。一方、画像所見がなくとも脳障害を示すMTBI(外傷軽度脳損傷)の被害者も存在します。MTBIについては、臨床上では存在するものの、未だ医学的には完全に説明しきれていないようです。その患者の多くは事故外傷とは別の原因の可能性もあり、心因性を排除できないとの報告もあります。

 本件はMTBIではなく「見逃された高次脳機能障害」と確信しました。私は画像所見が見出せない高次脳機能障害とMTBIは違う概念と区別しています。  

併合9級⇒併合6級(非該当⇒7級4号):高次脳機能障害 訴訟認定(40代男性・東京都)

【事案】

バイクで交差点を直進中、対抗右折自動車と衝突した。主な診断名は急性硬膜下血腫、左尺骨神経麻痺、左脛骨高原骨折、左腓骨骨折。

尺骨神経は手術で縫合、知覚障害は残るが運動性を取り戻した。左脚は脛腓骨の骨折により腓骨神経麻痺が残った。また、左上肢・下肢の傷跡は醜状痕が残った。脳障害については物忘れ、注意力低下、遂行能力の低下が目立った。

【問題点】

血腫はほどなく消失し、医師も継続的な検査・治療を行わなかった。画像上、「脳への器質的損傷なし」、また「意識障害なし」、これでは自賠責での高次脳機能障害認定は絶望的。 また、被害者の業務歴、学習歴から知能が高く、一見、障害が分からない。検査でも知能系の数値が平均より高く、障害が見えづらいケースである。

受傷から2年後、高次脳機能障害の評価ができる拠点病院にて専門医が検査を実施、高次脳機能障害と診断されたが、案の定、自賠責保険での高次脳機能障害は否定された。認定結果は上肢知覚障害、腓骨神経麻痺、醜状痕等の評価で併合9級止まり。

それからさらに2年後、方向性が定まらない状態で受任となった。 絶対に諦めるわけにはいかない。被害者との面談、家族の聞き取りから、本件はMTBIではなく、高次脳機能障害であると確信したからである。高次脳機能障害は訴訟での認定を目指すことになった。

【立証ポイント】

まず、受任していただける弁護士探しからとなった。大御所弁護士が断る中、当時、独立したての弁護士先生が引き受けて下さった。 逆転勝利のためには徹底的な準備と新たな医証が必要である。手持ち資料から訴訟認定したケースの訴状等を準備、弁護士に託した。新たな医証としては別の専門病院で神経心理学検査を一からやり直し、記憶障害、注意・遂行能力の低下を示すデータを揃えた。 また、奥さんから事故前後の変化について徹底的に聞き込み、時間をかけて詳細な記録を作成した。些細な情報ですら漏らすことは出来ない。これは後の口頭弁論に活かされる資料となった。 続きを読む »

お問い合せはお気軽に!

事務所メンバー

「交通事故被害者救済」がスローガン! 病院同行に日夜奔走しています。解決まで二人三脚、一緒に頑張りましょう。

代表者略歴を見る!

部位別解説 後遺障害等級認定実績(初回申請) 後遺障害等級認定実績(異議申立)

今月の業務日誌

2015年10月
« 9月   11月 »
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

月別アーカイブ