これは私が25歳の時、上司から言われた評価です。
23歳で安田火災(現・損保ジャパン)に入社以来、気が狂ったように保険を売りまくっていた時代でした。その時の上司は頭が切れるものの、あまり周囲から好かれていなかったようです。その性格ゆえか、私達若手へは容赦ない指導をしていただきました。当時の私は保険営業の常識である、いわゆる”縁故営業”を嫌い、自らの企画で契約を取り続けました(もっとも縁故がなければ、23歳ではお手上げの業界です)。企画と言えばかっこよいですが、要するに、飛び込み営業、電話営業、チラシなど、ひたすらを汗かき、足を使い、体と精神を酷使するやり方です。それでも売上は上位、一人悦にいっていたものです(若いころは格好がすべてのアホでした)。
しかし、このような無茶な方法は長く続くものではありません。若さと人の3倍の体力にものをいわせても、もって3年のやり方です。それを傍目に縁故やコネ、保険を売る市場を確保している人たちは悠々と売上を伸ばしていきます。そもそも平等な条件で競争しているわけではありません。社会における競争は同じスタートラインではないのです。やはり、長いレースでは敵いっこありません。そのようなことはわかっていましたが、仕事のやり方にこだわって気位が高かった、つまり、生意気だったのでしょう。この時期に上司から冒頭の人物評を頂きました。褒められたのか貶されたのか・・当時はどう受け取って良いかわかりませんでした。別の上司から噛み砕いて「バカ正直、ズルさがない」と言われました。
それから20年以上が経過して、まったく進歩していない自分に気付きます。ご依頼を断れず、体力ギリギリの業務が続いています。性格的に手を抜けない。効率よりやり方にこだわる、格好しいのスタイルは健在です。それが、自分一人の事務所で職人気質でやっていくなら良いでしょう。しかし、現在は事務所に補助者が毎年のように増えています。頑固一徹の職人ではなく、スマートな経営者に変わらなければなりません。
経営で大事なことは多くの啓発本で「理念と効率」と言われています。「理念」はともかくとして、「効率」については経営者失格でしょう。いくら技術があろうと、効率的に利益をだしていかなければ事業の発展はありません。俗な言い方ですと、「要領よく稼ぐ」ことが経営上、奨励されます。
職人から経営者へ・・日々、迷いの中、まさに生みの苦しみの中にいるようです。 それでも、利口と言われるよりバカと言われる方がましな気がします。歳を重ね経験を積んだ今、周囲を見るに、利口な人は単なる「ズルい人」となり、結局は評価が下がって憂いき目に陥るようです。対してバカは愚直でも、貫けば「信念の人」に成ります。単なるバカは困りますが、信念を転じて職業者の矜持・経営理念に昇華できれば、もはや尊敬の対象です。
私の、いえ、会社社員の、効率に流れない真っ正直な仕事は、弁護士、医師、保険会社、何より依頼者の皆様に評価されているはずです。そして、そのような評価とそれを成しうる社員が集えば、いずれ「効率」すらも凌駕する力=「信用」を獲得すると思います。その信用を長い年月積み重ねれば、いずれ恒久的な利潤を引き寄せると信じています。
少々、甘いでしょうか? 採用した社員・補助者さん達は、決して優れた能力を持っているわけでありません。採用は人間がまっすぐであることを最大評価としています。技術など私が徹底的に仕込めば大丈夫です。変えようがないのはハートの部分です。誰しも、何年経っても譲れないものがあるはずです。私はそこを見ていきたいのです。
20数年経った今、人物評を言い換えましょう、
バカは困るが、中途半端な利口もいりません