高次脳機能障害を評価するにあたり、専門医と言語聴覚士など専門スタッフ、検査設備を備えた病院の確保が重要です。被害者さんは急性期を過ぎたころ、在住県の高次脳機能障害支援拠点病院に転院し、リハビリ、評価検査へ進むことが理想です。しかし、現実は厳しいもので、比較的軽度の障害者は・・治ったとして病院に行かない、リハビリ・評価の必要性を感じていない、その拠点病院を知らない、紹介してくれる人もいない、家から遠すぎる、事情により受け入れを拒否される・・など簡単にはいかないのです。
さて、本日、病院同行の長野県ですが、長らく松本市のI病院がこの地域の拠点病院でした。多くの高次脳機能障害の患者さんが頼りとしていた病院です。しかし! ここで活躍されていた高名な医師が他の病院に移ってしまい、大変困ったことになっていました。いくら、検査設備が充実していようと、指揮をとるべき専門医がいなければまったくの戦力ダウン、普通の病院になり下がります。事実、高齢の患者さんによると、残った医師の診察では「痴呆と障害が半々?」「高次脳かどうかわからない?」と実に心許無かったそうです。そこで、かの先生を追って、患者さんと共に移転先の病院に同行しました。その先生の検査によって、ようやく高次脳機能障害の確定診断を受けるに至りました。 この病院にて、神経心理学検査の計画を練り、十分な検査データを確保しました。さらにMRI(先月、3.0テスラが導入!)検査ではT2スター、フレアはもちろん、特に拡散テンソルによる解析ができました。(この拡散テンソルは未だ自賠・労災の審査では参考程度の位置づけですが、いずれ重きを成すものとして、数年前から私達は注目しています。) 高次脳機能障害の評価は専門医と設備の両方を兼ね備えた病院でなければなりません。どちらかが欠けても駄目なのです。やはりというか、今年の4月、拠点病院の指定もこの先生を追いかけて?移転しました(実は病院の指定変更が先だった?・・知る由もありませんが)。 当然の結果ながら、軽い感動を覚えています。