ムチウチの患者は、普段のリハビリを自宅の近所や職場近くの病院で行い、また個人医院が多いです。
近年の整形外科では、個人医院であってもレントゲン室がある場合が多いです。しかし、他方でMRI設備がある個人医院は少数にとどまっております。何故なら、MRI設備は高価だからです。
また、以前に説明しましたたように、医者は医療過誤を防ぐ目的から、骨折の有無を確認するためにレントゲンを診れば十分で、MRIを撮らない医者が多いことをお話ししました。このことから、レントゲン室は自分の病院にあっても、MRI設備までもわざわざ手元に置かなくてもいいと考えるのが通常です。
しかし、後遺障害が認められるためには、MRIを撮ることが必要です。
そこで、普段通われている病院にMRI設備がなくても、主治医にMRI設備の整った病院を紹介してもらい、そこでMRIを撮ってもらい、その画像所見をもって主治医に診察してもらう必要があります。
この点について、皆様に質問をしてみたいと思います。
とある交通事故でムチウチの診断が下された患者A、Bがおりました。両者ともに、交通事故についてのホームページを見ていくうちに、MRIを撮ろうと考えました。しかし、患者Aの主治医XはMRIを撮ることを拒否し、他方で、患者Bの主治医YはMRIを撮影するために、他院を紹介しました。患者Aは、やむを得ず、主治医とは違う病院でMRIを撮りました。
皆様に質問です。
後遺障害申請の際には、患者A、Bは共にMRI画像を提出しました。患者A、Bのどちらが後遺障害の程度を重くみてくれると思いますか。
おそらく、保険会社(自賠責・調査事務所)は、多くの場合、患者Bの方を重くみるでしょう。
保険会社(自賠責・調査事務所)の立場からすると、医者がMRIを撮るのかどうかを判断するのであり、紹介すらしなかった以上は、症状の程度は軽くみられやすいです。また、主治医が撮らなかったのに、わざわざ他の病院に行ってまで撮るのは後遺障害狙いのためではないかとみられてしまう恐れもあります。よって、患者Aの方法はあまりお勧めできません。なお、患者Aの方法は絶対にダメというわけではありません。中には、これでムチウチの症状を重くみてくれて、14級9号が認められるケースも存在しますが、可能性の高さからすると、患者Bの方が妥当です。
よく相談会では、医者にMRIを相談する際には、あくまで、患者が要求するような話し方をするのではなく、「弁護士や知り合いの保険会社の人に相談したところ、MRIを撮っておいた方がいいよと言われたのですが・・・」と間接的に伝えることをアドバイスさせていただいております。このように医者に話せば、多少、対応がやさしくなることもあります。
しかし、医者の中には、頑なに撮らないと主張し続ける方も稀におります。また、このアドバイス通りに話をしたとしても、医者の中にはとても嫌がる方もおります。何故なら、医者は治療をすることが仕事であって、保険手続きや賠償交渉のために仕事しているわけではないからです。よって、治療以外のためにMRIを撮ることになると考える医者にとって、このようなことを認めないと考える方もおります。 しかし、現代のような資本主義社会ですと、治療にはお金がかかります。そして、保険会社は完治するまで何年も治療費を出し続けるようなことはしません。どこかで保険の手続きをする必要があります。
そこで、どうしても主治医がMRIを撮らないようでしたら、思い切って転院することも有効かもしれません。 何度も転院を繰り返すのは、よほどのことがない限り、保険会社はあまり認めたがりません。転院は1回を目安とした方がいいでしょう。 なお、以前のブログ記事には、MRIを撮るのは事故からなるべく早めにした方がいいと述べました。その理由として、事故当初よりも治療によって画像上緩和されている可能性をあげましたが、今回のように、MRI撮影依頼を早めに切り出しておくと、その医者がどのような判断を下すのかを早めにみることができますので、二重の意味でMRI撮影は早めに切り出すことをお勧めします。