先日、自賠責保険・調査事務所の審査担当者様からメールを頂きました。なんでもご自身のHPに私の記事を引用したいとのことです。

 理由は巷の弁護士・行政書士のHPで「調査事務所は意地悪で非該当を出すために審査している」「保険会社寄りの組織」などの悪評ばかりで辟易していたところ、私のHPはそのような偏見はく、公平な見方をしている記事に共感を覚えたとのことです。申請側と審査側、立場は違えどそれぞれ忠実に己の業務に取り組んでいます。私は経験上、一方からの隔たった見識は障害立証に効果的ではなく、むしろ双方の思惑、視点を考慮した作業が功を奏することが多いと実感しています。何事も敵味方で考える2分論は浅慮というものです。

 立証作業(障害の存在・程度を明らかにすること)は調査事務所の審査(障害の存在・程度を判断すること)と実は同じ思考回路で進んでいくのです。この感覚は熟練した者にしかわかりません。「調査事務所、保険会社は敵!」と放言しているだけの業者はまったく経験が浅いと思います。    本事案は調査事務所の真面目さが際立ちます。むしろ(認定等級に)私よりこだわりがありました。もっとも、いかに医師が正確な審査の妨げになっているか・・の例でもあります。 

10級10号:手根骨骨折(30代男性・埼玉県)

【事案】

自転車で交差点を横断中、左折するトレーラーに巻き込まれ、右手関節(尺骨遠位端、手根骨、第二中手骨)、右足関節(両顆部)を骨折した。手関節、足関節共にプレート固定を施行した。 手根骨は具体的に大菱形骨、有鉤骨の骨折。

【問題点】

画像上、10級レベル(2分の1以下)の可動域制限が見込める。しかし、主治医は多忙で後遺症に協力的ではない。計測など面倒なようで、あまり時間をかけてくれない。健側(掌屈90°背屈90°・・柔らかい)に対して患側(掌屈70°、底屈30°)であった。つまり合計(180:100°)、10°足らずで10級を逃している状態。それでも足関節で10級認定が確実な為、併合9級の結果となる。医師の機嫌を考え、橈屈・尺屈の計測は諦めた。

【立証ポイント】

申請後、調査事務所から醜状痕(手術創)の計測及び橈・尺屈計測の追加依頼がきた。これを理由に再度、医師面談を行った。「先生のせいで再調査が来ちゃったよ!」と主治医を責め、傷の計測(醜状痕の基準以下であったが・・)、橈屈・尺屈を改めて計測いただいた。

結果は橈屈・尺屈が2分の1以下制限となり、掌屈・背屈の10°足らずを繰り上げて10級10号に。手関節は12級であっても併合9級の結果は変わりません。調査事務所は正確な認定にこだわっているのか・・かなり生真面目に審査していているようです。

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【事案】

バイクで交差点を直進中、対向右折自動車と衝突して右手首を骨折したもの。救急搬送後、プレート固定とした。理学療法を継続、半年後に症状固定を迎えた。

【問題点】

相談会で計測のところ、掌屈+背屈が2分の1ギリギリの数値であった。また、画像上、変形・転位など、癒合状態の説明が必要であった。

【立証ポイント】

医師面談にて、癒合状態にやや変形が残ること、手根骨に骨挫傷があることなど、詳細な記載を促した。計測もしっかり見守り、間違いのない数値を記録した。

以上、丁寧な作業で期待通り10級10号を固めた。

(平成26年10月)

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 本日は補助者 山本が投稿します。

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 簡単な質問です。

 皆様は自動車保険会社の社員とします。とある交通事故の被害者が、「治療したけど、まだ痛いし、痺れる! 後遺障害があります!」と主張しておりました。

 この被害者は、画像上、骨折がなく、また、筋肉、靭帯、神経も切れていません。しかも見た目では痣や傷痕らしきものが見当たりません。

 この被害者に後遺障害があると思いますか?

 ほとんどの方は、後遺障害を認めるのをためらうと思います。なぜなら、見た目では怪我がないからです。当たり前ですが、怪我がないなら、後遺障害を認める必要はありません。もっと言うなら、治療費を出す必要もありません。仮に、そのような(自称?)被害者すべてに保険会社が治療費等を出す決定をする世の中ですと、保険金詐欺がとても行いやすくなっている社会といえるでしょう。

 しかし、見た目では怪我がなくても、本当に辛い思いをしている被害者が存在しております。特に多いのが、交通事故の約60%を占めているムチウチ(「頚椎捻挫」・「腰椎捻挫」等)の患者です。交通事故の大多数の被害者が、見た目上怪我がないからという理由で自動車保険会社が何もしないとするわけにはいきません。あまりにも冷たい社会になってしまいます。

 そこで、保険会社は上記した骨折ない、筋肉・靭帯・神経切れてない場合でも、治療費等を出しています。さらに、「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)として、後遺障害をも認める余地をも残しております。

 ※なお、ここまで述べてきたこととは異なり、ムチウチの中でも、画像上神経圧迫が明確であるような場合は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、12級13号の後遺障害が認められますが、このようなケースは非常に稀ですので、ここでの(通常の)ムチウチは、14級9号レベルとして述べさせていただきます。

 ただし、すべてのムチウチ被害者に後遺障害が認められるとは限りません。先ほど申しましたように、保険金詐欺のリスクを負う保険会社は、お金を出すに値する被害者とそうでない被害者とに分けております。

 例えば、事故の内容から、後遺障害を認めないと判断する場合もあります。また、はじめは治療費を出していても、暫くしてからその者に治療の必要性がなくなったと判断すると、事故から数カ月であったとしても、すぐに打ち切ってきます(もはや後遺障害の有無以前の問題です)。

 では、本当に辛い被害者はどうすれば後遺障害を認めてもらえるのでしょうか。

 結論として、「保険会社(調査事務所)に信じてもらう」しかないのです。何故なら、先ほども申しましたように、見た目では怪我がはっきりしないからです。

 それでは、どうすれば信じてもらえるのでしょうか?

 次回から、信じてもらうためのいくつかの要素をお話ししたいと思います。

 つづく    

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