一昨日の⑤廃用性症候群でも語りましたが、関節可動域制限の認定には「曲がらなくなった原因」をしっかり説明することが重要です。可動域制限の数値は審査上、最後に確認する数値です。自賠責調査事務所は先に画像を精査して可動域制限の等級を予断しています。私達、立証側もこれと同じプロセスでアプローチしています。そうしないと立証側と審査側で等級が一致しなくなります。受傷様態~症状固定までの画像、術式、経過をみて目標等級を策定します。

 基本中の基本なのですが、これを励行している業者は極めて少ないようです。相談会では毎度、等級を読み違えた他業者に対する苦情系の相談が多いからです。       c_h_17-2 完治が目標!だけどね・・

10級11号:足関節開放脱臼骨折(30代男性・埼玉県)

【事案】

自転車で交差点を横断中、左折するトレーラーに巻き込まれ、右手関節(尺骨遠位端、手根骨、第二中手骨)、右足関節(両顆部)を骨折した。手関節、足関節共にプレート固定を施行した。

【問題点】

本人の回復努力と長期のリハビリから、ケガの重篤度の割に骨癒合は良好、回復は順調であった。医師も可動域制限など残さずに治す執念を持っていた。それは当然のことであるが、これだけのケガで後遺障害を残さず完治するわけはない。中途半端な回復で手首12級、足首12級の併合11級の可能性があった。

【立証ポイント】

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 いくつか非接触事故の受任経験があります。相手を避けるために転倒した場合、相手がそのまま行ってしまえば最悪、自爆事故とされます。また、相手がそれなりに責任を感じていた場合でも20:80の事故であれば、非接触を考慮し10%の修正が加わって30:70となることが多いようです。まして、相手が歩行者や自転車の場合は大変です。相手に個人賠償責任保険の加入があるかないかがポイントとなります。

 最近、兵庫県で自転車の賠償保険加入が義務となったニュースがありました。義務化について是非の議論はありますが、自転車の賠償能力が担保されることは良いことです。

 本例は後遺障害の立証が主役ではありません。相手自転車の個人賠償保険から賠償金を勝ち取った好取組です。  

12級13号:足関節外顆骨折 訴訟認定(30代男性・埼玉県)

【事案】

バイクで交差点を青信号で直進中、信号無視の自転車が横断してきた。それを避けようと転倒し、右足関節の外顆を剥離骨折、後距腓靭帯を損傷、手関節もTFCC損傷の疑いがあった。

【問題点】

相手は自転車で、なおかつ非接触の事故であり、まったく賠償交渉の進展がないまま相談会に参加された。外傷についてはCTやMRIを撮っておらず、診断名があやふやで後遺障害が絞りきれなかった。まして、自賠責保険のような申請先がなく、そのまま相手加入の個人賠償責任保険への請求なので難航が予想された。

【立証ポイント】

同時並行して連携弁護士に個人賠償保険社への交渉を依頼した。非接触による過失減額が争点となったが、それ以上に後遺障害の残存が問題となった。それについては主治医と面談し、MRIの追加検査とリハビリ記録を精査するなど進めたが、微妙な所見に留まり、医証をまとめるのに苦慮した。

結局、訴訟に発展し、足関節は12級13号の賠償となった。後遺障害の立証は今一つであったが、非接触事故で相手自転車から1000万円超の賠償金を取ったことは評価できると思う。  

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 他の弁護士、行政書士からのセカンドオピニオンで目立つケースの一つに、「関節の可動域制限が2分の1なので、『10級が取れます!』と依頼した先生に言われました。でも、認められませんでした(怒)」があります。これは後遺障害の予断をするに際し、可動域制限の欄を見るだけで画像を観ない、または治療経過を注視しない先生に起こります。まさに交通事故110番の功罪の一つです。例えば「2分の1制限で10級、4分の3制限で12級・・」可動域制限のことは110番の本で学習済、得意顔で依頼者に説明します。しかし「それ程の可動域制限が起きる原因」に踏み込んでいません。だから結果がでてから赤っ恥、依頼者のクレームに発展するわけです。110番の本で学習しただけのにわか専門家なので仕方ありません。 

 今回紹介する実績はリハビリを中断し、関節硬縮が進んだケースです。これなど10級の期待など最初から持たせません。現実的な等級を目指します。もっとも、110番はじめ色々とHPを観て学習した、狡猾な詐病者も存在します。彼らは「ここまでしか曲がりません!」と可動域制限を装うのです。でも、自賠責調査事務所を欺くことはできませんよ。騙されるのは”画像を観ない・わからない”自称専門家のみです。

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12級13号:脛骨プラトー骨折(50代女性・神奈川県)

【事案】

自転車で交差点を横断中、対向右折自動車の衝突を受け転倒、左脛骨を骨折した。直後、プレート固定を施行、抜釘は1年後。その間、リハビリで膝関節の機能回復を図るも、相当に制限が残ってしまった。

【問題点】

相談会では2分の1以下はおろかほぼ用廃レベル。画像上、関節面にやや不整があるものの、それ程の可動域制限はあり得ない。本件は廃用性症候群、つまり、リハビリをサボったケースと思った。であるならば、計測値通りの認定は困難となる。原因を究明する病院同行となった。

【立証ポイント】

早速、主治医に面談し、理学療法士の可動域計測にも立ち会った。やはりというか、理学療法士の記録を見るとリハビリ中に相当の回復は図られていた。これでは機能障害は認められない。8級はおろか10級も認められないことを、申請前に十分に言って聞かせた。

結果は痛みや不具合について12級13号の認定。調査事務所の判定は正しい。これが妥当な結果である。可動域制限は自力回復を続けるよう、厳しく諭した。  

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 14級はいくつとっても併合の対象にはなりません。すると他に13級以上の障害があればつい軽視しがちです。しかし12級13号の神経症状は判例上、逸失利益10年が相場です。そこで逸失利益が67歳まで見込める14級を加えることが必須作業となります。この辺のセンスは弁護士へ引継ぎ後の賠償交渉まで見据えているからこそです。

c_g_s_6  上肢・下肢の醜条痕は手の平の大きさで14級、手のひら3倍の大きさで12級判断となります。

 

併合12級:脛骨・腓骨骨折(50代女性・埼玉県)

【事案】

自転車で交差点を横断中、対向左折自動車の衝突を受け、左足首を骨折した。脛骨、腓骨共に骨幹部を開放骨折、直後にプレート固定術を施行した。

【問題点】

医師の処置、特に手術は非凡な腕であった。おかげで回復は良好、可動域制限を残さず症状固定を迎えた。そうなると痛みやその他不具合を観察することになる。

【立証ポイント】

やはり可動域が回復したとしても正座はもちろん、極端な可動には無理がある。症状を丁寧に診断書に落とし込み、また開放創と手術痕を写真に撮り、醜状痕も加えるようにした。結果は神経症状で12級13号、醜状痕で14級5号の併合12級となった。おまけの14級と言えど逸失利益の伸長に重要、12級13号の喪失率14%で10年間、さらに67歳まで喪失率5%を請求するからです。  

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 不全骨折・・ポキンと折れていない骨折でしょうか。医師は曖昧な診断名を残すことがあります。レントゲンだけではなくCTやMRIを用いて精査すれば良いのですが、町の整形外科では設備がなく、また、重大な骨折でなければ、わざわざ大きい病院に検査を依頼することもありません。それでも丁寧に進めれば、お馴染みの14級9号「神経症状」を抑えることができます。「折れているのかどうか?」はっきりさせたいのは山々ですが、時として曖昧でも良いのです。白黒つけるだけが人生ではありません。

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14級9号:中足骨不全骨折?(20代女性・千葉県)

【事案】

歩行中、道路を横断の際、対向右折車に右足甲をひかれた。

【問題点】

レントゲンから初診の診断名は「右足打撲」。その後、転院先の病院で腰椎捻挫が加わる。足の痛みが尋常ではない事から、MRIで靭帯を観察、そこで中足骨の不全骨折が加わった。しかし、私が観たところ骨折は微妙、調査事務所もこれでは認めないであろうと予想した。初期の診断名が不確実、かつ後遺障害の狙いが絞れない・・

【立証ポイント】

知人の紹介を受けて受任、足と腰、共に神経症状の14級9号を念頭に立証作業を進めた。受傷から一貫した症状の推移を診断書に落とし込み、骨折の有無にはこだわらないようにした。さらに腰のMRIも施行、腰椎捻挫の14級を保険とした。 結果は足=”打撲による”、腰=”捻挫による”14級9号が認められ、併合14級となった。治療と立証作業を計画的に進めれば、調査事務所は曖昧な診断名でもきちんと見てくれるのです。

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 後遺障害の仕事で重要なことはズバリ「目利き」です。外傷の診断名だけで判断するのではなく、受傷直後からの画像を確認し、どのような障害が見込まれるか予断することです。本件も相談会で初めてお会いした時からしかるべき等級に向けて進めました。等級認定はもちろん、その後の連携弁護士による交渉解決まで、ほぼ読み通りの進行となりました。   c_g_l_12

13級8号:大腿骨骨幹部骨折(児童女子・神奈川県)

【事案】

私道を横断のところ自動車にはねられ太ももを骨折した。

【問題点】

日々成長著しく、骨折部はさすがに仮骨形成が良好であった。問題は仮骨部の変形が外見上に影響なく後遺障害とならない事、そして、子供さん特有の「病院嫌い」から治ったと言い張ること。また、成長期の症状固定は将来の成長障害の懸念から遅れがちであることがあげられる。心配をよそに数年も経てば障害は目立たなくなることが多い。

【立証ポイント】

機能障害や変形は見込めない。狙いを安易に神経症状に求めず、短縮障害に絞った。成人までは左右差は解消すると期待できるが、しばらくは1cm程度の差は続くはずである。主治医にCR上で大腿骨の計測をしていただき、しっかり13級を確保した。  

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 交通事故外傷ではまず、むち打ち、続いて腰椎捻挫、鎖骨骨折が多いと思います。それ以外ではやはり下肢の骨折が多いようです。現在、9級以上が見込まれる重傷案件を7件お預かりしています。症状固定までかなり時間がかかりそうです。逆に比較的回復程度の良かった案件に対してもしっかり等級を抑え込んでおります。基本に忠実ともいえる対応例をいくつか紹介しましょう。   kansetu_21 

12級7号:大腿骨・膝蓋骨骨折(20代女性・東京都)

【事案】

2輪車の後部座席に搭乗、交差点を直進中、対向右折車と衝突したもの。大腿骨の骨幹部と遠位端外顆、膝蓋骨を骨折、髄内釘で固定した。膝部は開放骨折であたことから感染症の観察と癒合で1年、膝関節可動域の回復でさらに1年のリハビリを要した。

【問題点】

本人の努力で可動域の回復は良好、このままでは12級13号止まり。ケガの重篤度から可動域制限の7号を抑える必要があった。

【立証ポイント】

早速、リハビリ先の医師に面談した。事情をご理解いただき、可動域の計測と診断書の記載を速やかに行った。膝関節可動域は「健側140°患側105°」と記録、ギリギリの数値で12級7号とした。  

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 すみません、またしても単なる日記でお茶を濁します。

 仕事中、ふとベランダに目をやると、つがいの鳩が遊びに来ていました。おそらく巣の設置場所を探しているのでしょう。

 一休憩しようとコーヒーを入れました。先日頂いた鳩サブレがあるのを思い出し、一緒に頂きました。すると、二匹の鳩は窓に張りついてこっちを見ています。仕方ないので鳩サブレのひとかけらをあげました。都会の鳩は異常に人馴れしてして、かなり近づくまで逃げません。 2015031510410001

 エサをやると居ついてしまうので、これ限りと約束しました。

 春ですな。    

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 ちゃんと生きております。この4年間、土日祝、盆暮れ正月GWを除く平日は欠かさず業務日誌を更新してきました。1週間も空けてしまったのは初めてです。

 今週は長野出張、病院同行7件、確定申告が重なり睡眠時間を削りながら連日勝負が続いております。忙しいことはそれだけ皆様の期待が大きいこと、愚痴をこぼしては罰が当たります。経営効率を考えたスマートな仕事ができれば良いのですが、相変わらず体を張って泥臭く頑張っています。

 体を壊さないよう、4月までになんとか取り戻します。特に好評な実績投稿をまとめてUPしたいと思います。   OLYMPUS DIGITAL CAMERA  デジカメを買い換えました。醜条痕を撮影することを考慮し、マクロ撮影を得意とする機種を選びました。久々の新機種、性能の向上に隔世の感がします。  早速、試写。写真は長野滞在中のホテル、2日間の臨時事務所となります。平日なので安価で豪華な部屋にできます。  

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【事案】

自転車走行中、前方より自動車の衝突を受け、転倒。直後、救急搬送され、前頭部脳挫傷、外傷性硬膜下血腫、くも膜下血腫の診断となった。病院では、脳外傷後のせん妄の影響で、医師や周囲に対して暴言や問題行動が続き、追い出されるように3日で退院させられた。その後、転院先でも易怒性や病識欠如から、十分な検査はもちろん、高次脳機能障害の診断を得ないまま、保険会社に促されるまま症状固定を迎えてしまった。認定等級は神経症状12級13号、嗅覚障害12級相当。結果、併合等級11級の評価となった。

【問題点】

自賠責調査事務所は高次脳機能障害について医療照会を行ったが、主治医は「すべての項目で異常なし」と回答してしまった。また、家族へも「日常生活状況報告書」を送ったが、これも本人の病識欠如により未回答。なんとか嗅覚障害のみ追加検査したに過ぎなかった。結局、審査期間は1年を要したが高次脳機能障害は見逃された。

このまま、この事故は終わるかに見えた。しかし、嗅覚に並んで味覚喪失を自覚していたご本人から電話で「味覚がない」旨の相談を受けた。ある種の予感を感じ、相談会にお呼びした。観察したところ、やはり高次脳機能障害を予断、さらに奥様をお呼びして記銘力の低下と性格変化を確信した。相手保険会社との折衝、11級の後遺障害保険金の先行請求を連携弁護士に任せて生活の維持を図り、長く険しい立証作業へ突入した。

【立証ポイント】

主治医と面談、事情を説明して再評価への理解を得た。まずは相談・受任のきっかけである味覚検査を実施。結果は訴え通りの完全脱失(全喪失)。

高次脳機能障害は7級4号を改めて立証、味覚障害12級相当を新たに認定させて併合6級となった。当然の結果であるが、当然とならないことが多発するのが交通事故・後遺障害の世界。間違った等級の変更に時間で2年余り、検査通院およそ15回。その内、私との病院同行は8回にも及んだのです。

※ 併合のため分離しています

(平成27年3月)  

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 春先は例年、体調がすぐれません。健康だけが取り柄ですが、年間を通して疲れがでるのが年度末のような気がします。有用な記事出しができずすみません。

 重い案件をたくさんお預かりするとこちらも神経を削るような作業になります。後遺障害の仕事は体力はもちろん、精神的にもタフでなければなりません。    来週は長野出張はじめ、重要な病院同行が連日続きます。重傷の依頼者さまが多いので気が抜けません。高次脳機能障害、脊髄損傷、下肢切断など・・一つ一つ依頼者の痛みを噛みしめて臨みます。もちろん外傷性頚部症候群、頚椎捻挫の相談も連日のようにあります。むち打ちと言えど軽度から重度まで程度の幅があります。どう見ても軽度の方への対応はどうしても遠慮がちになります。私は軽度の方の障害を誇張して損害を拡大させる仕事はしません。重傷者が実情より低い障害評価となることを防ぐことが何よりの仕事と思っています。そのような危険性のある、本当に困っている被害者、苦しんでいる被害者を優先したいと思っています。やや傲慢な姿勢に見えるかもしれませんが、誤解を恐れずに言えば、被害者にも優先順位があるように思えてなりません。医療用語で言えば「トリアージ」でしょうか。困窮度の高い、本当に助けるべき人への対応を急ぎたいのです。    軽度のケガでも対応してくれる業者はたくさんあります。しかし、重傷者は別、依頼する弁護士や行政書士に対し「その案件を扱える経験・力量があるか否か」をよく検討する必要があります。むち打ちばかり対応している業者であれば、内臓損傷や神経麻痺、高次脳機能障害への対応は心もとないはずです。もっともHPでは誰もが経験豊富と謳っていますが・・。

 人生を左右するような重傷者は宣伝に釣られず、安易に業者を選ぶことなく、慎重に検討していただきたいと思っています。そのような意味でも当HPは指標となるであろう実際の対応例を積極的に掲載しています。これだけ専門家が大氾濫している現在、詳しい知識・解説満載のHPは、もはや専門書の丸写しに過ぎません。手前味噌ですが、私たちのグループの交通事故外傷における実際の対応例・傷病種類は他の弁護士・行政書士と比べて隔絶していると自負しています。ご依頼を頂けるかどうかは別として、是非、ご自身のケガの類似例を探して参考にしていただければと思います。  

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【事案】

自転車走行中、前方より自動車の衝突を受け、転倒。直後、救急搬送され、前頭部脳挫傷、外傷性硬膜下血腫、くも膜下血腫の診断となった。病院では、脳外傷後のせん妄の影響で、医師や周囲に対して暴言や問題行動が続き、追い出されるように3日で退院させられた。その後、転院先でも易怒性や病識欠如から、十分な検査はもちろん、高次脳機能障害の診断を得ないまま、保険会社に促されるまま症状固定を迎えてしまった。認定等級は神経症状12級13号、嗅覚障害12級相当。結果、併合等級11級の評価となった。 c_g_ne_92【問題点】

自賠責調査事務所は高次脳機能障害について医療照会を行ったが、主治医は「すべての項目で異常なし」と回答してしまった。また、家族へも「日常生活状況報告書」を送ったが、これも本人の病識欠如により未回答。なんとか嗅覚障害のみ追加検査したに過ぎなかった。結局、審査期間は1年を要したが高次脳機能障害は見逃された。

このまま、この事故は終わるかに見えた。しかし、嗅覚に並んで味覚喪失を自覚していたご本人から電話で「味覚がない」旨の相談を受けた。ある種の予感を感じ、相談会にお呼びした。観察したところ、やはり高次脳機能障害を予断、さらに奥様をお呼びして記銘力の低下と性格変化を確信した。相手保険会社との折衝、11級の後遺障害保険金の先行請求を連携弁護士に任せて生活の維持を図り、長く険しい立証作業へ突入した。

【立証ポイント】

最初に主治医と面談、事情を説明して再評価への理解を得た。まずは相談・受任のきっかけである味覚検査を実施。結果は訴え通りの完全脱失(全喪失)。続いて、高次脳機能障害の検査が可能な病院への紹介状を頂き、そこで神経心理学検査を実施した。狙い通り、三宅式記銘力検査、ベントン記銘力検査、TMT検査で有意な数値を記録、つまり記銘力、注意・遂行能力の低下を裏付けた。また、再度MRI検査を実施、フレアを脳外科医と共に既存画像と比較読影し、脳萎縮進行について意見の一致をみた。

さらに、受傷初期の症状についてカルテ開示を行い、問題行動をつぶさに抜粋した。意識障害の記録は最初の病院が(暴言や治療拒否等の問題行動の為)協力、診断書記載を拒否したので、受傷直後のせん妄状態の立証はもちろんだが、本人の名誉回復のためにどうしても示したかった。

また、易怒性、性格変化について奥様から細かく聞き込み、日常生活状況報告書に留まらず、同別紙にて詳細にまとめた。これは性格変化、情動障害立証の必須作業である。

これら新たな資料一式を主治医にお返して、「後遺障害診断書」、「神経系統の障害に関する医学的意見」等、すべて一から再作成していただいた。

結果は高次脳機能障害7級4号、味覚障害12級相当が新たに認定、併合6級となった。当然の結果であるが、当然とならないことが多発するのが交通事故・後遺障害。間違った等級の変更に時間で2年余り、検査通院およそ15回。内、私との病院同行は8回にも及んだのです。

※ 併合のため分離しています

(平成27年3月)  

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 繰り返し訴えていまずが、高次脳機能障害は見逃されやすいのです。特に微妙な能力の低下や性格の変化は医師も捉えられません。当然ですが能力や性格には個人差があるので、事故前の患者を知らない医師は比較できないのです。そして多くの場合、本人に病識(自分が脳外傷で障害を負ったという自覚)がありません。家族も「いずれ治るかもしれない」という期待から、深刻に考えない傾向です。以上から、せっかく自賠責より医療照会・追加調査があってもスルーされてしまいます。

 本例はその典型例です。是非、わずかな異常でもキャッチして早めの相談をお願いします。本人はもちろんですが、私も本当に大変なのです。

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併合11級⇒併合6級:高次脳機能障害 味覚障害 異議申立(60代男性・埼玉県)

【事案】

 自転車走行中、前方より自動車の衝突を受け、転倒。直後、救急搬送され、前頭部脳挫傷、外傷性硬膜下血腫、くも膜下血腫の診断となった。病院では、脳外傷後のせん妄の影響で、医師や周囲に対して暴言や問題行動が続き、追い出されるように3日で退院させられた。その後、転院先でも易怒性や病識欠如から、十分な検査はもちろん、高次脳機能障害の診断を得ないまま、保険会社に促されるまま症状固定を迎えてしまった。認定等級は神経症状12級13号、嗅覚障害12級相当。結果、併合等級11級の評価となった。

【問題点】

 自賠責調査事務所は高次脳機能障害について医療照会を行ったが、主治医は「すべての項目で異常なし」と回答してしまった。また、家族へも「日常生活状況報告書」を送ったが、これも本人の病識欠如により未回答。なんとか嗅覚障害のみ追加検査したに過ぎなかった。結局、審査期間は1年を要したが高次脳機能障害は見逃された。

 このまま、この事故は終わるかに見えた。しかし、嗅覚に並んで味覚喪失を自覚していたご本人から電話で「味覚がない」旨の相談を受けた。ある種の予感を感じ、相談会にお呼びした。観察したところ、やはり高次脳機能障害を予断、さらに奥様をお呼びして記銘力の低下と性格変化を確信した。相手保険会社との折衝、11級の後遺障害保険金の先行請求を連携弁護士に任せて生活の維持を図り、長く険しい立証作業へ突入した。

【立証ポイント】

 最初に主治医と面談、事情を説明して再評価への理解を得た。まずは相談・受任のきっかけである味覚検査を実施。結果は訴え通りの完全脱失(全喪失)。続いて、高次脳機能障害の検査が可能な病院への紹介状を頂き、そこで神経心理学検査を実施した。狙い通り、三宅式記銘力検査、ベントン記銘力検査、TMT検査で有意な数値を記録、つまり記銘力、注意・遂行能力の低下を裏付けた。また、再度MRI検査を実施、フレアを脳外科医と共に既存画像と比較読影し、脳萎縮進行について意見の一致をみた。  さらに、受傷初期の症状についてカルテ開示を行い、問題行動をつぶさに抜粋した。意識障害の記録は最初の病院が(暴言や治療拒否等の問題行動の為)協力、診断書記載を拒否したので、受傷直後のせん妄状態の立証はもちろんだが、本人の名誉回復のためにどうしても示したかった。 続きを読む »

【事案】

原付バイクでT字路前で停止中、左方より右折してきた自動車の衝突を受け受傷。その際、左膝脛骨を骨折した。骨折部をプレート、スクリューで固定し、1年半後に抜釘した。その後、リハビリを続けるものの、外出時に装具が必要で、疼痛も改善しなかった。さらに半年後に症状固定、後遺障害申請を行ったが、結果は12級13号。神経症状の評価に留まった。

【問題点】

委任を受けた弁護士より、異議申立の依頼を受けた。まずは読影である。装具を必要とするほどの症状であれば、靭帯の損傷を最初にチェックしなければならない。また、骨癒合状態に相応の変形、転位があるか、関節面の不整等も抑えるべきである。やはりと言うか、CT、CR上で骨折した骨頭部が斜め下後方に転位している様子が確認できた。これを膝の不安定性の原因に加え、検査のやり直しを進めた。

【立証ポイント】

まず最初に主治医と面談、事情を説明して立証作業の理解を得た。

MRIの再検査及びストレスXPを施行、靭帯を観察した。それらに動揺性をきたす程度の異常は認められなかった。関節面の不整は既にCT上で明らかだが、改めて確認できた。

次に伸展硬縮(膝がまっすぐ伸びない)による短縮障害も追求、下肢長の計測も加えた。左右の関節裂隙に差があるものの、脛骨自体の短縮は計測できなかった。

最後に後遺障害診断書を再作成し、硬性補装具の必要性、ラックマンテストの数値、脛骨の変形(後方転位)、下肢長数値を加えた。 20150422_3結果は高度な不安定性を示す靭帯損傷はなし、短縮障害についても伸展硬縮の程度から認められなかった。それでも関節面の不整等から不安定性をある程度勘案し、12級7号に変更していただいた。結局、「局部に頑固な神経症状を残すもの」から「下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」へ、障害の系統を正したことになった。   号の変更は稀にある再申請だが、非常に重要な仕事である。13号が7号になれば、逸失利益の大幅な増加が見込まれるからである。   (平成25年12月)  

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【事案】

自動車搭乗中、渋滞で停車していたところ、後続車の追突を受け、前車にも衝突、さらに中央分離帯にまで弾き飛ばされた。その際、ハンドルを握ったまま肘を強打し、以来、肘から手指にかけてしびれに悩まされる。 理学療法を継続したが症状の消失には至らず、9か月後に症状固定し後遺障害申請するも「非該当」の判断となった。

【問題点】

器質的損傷がない、つまり、骨折や靭帯損傷がなく、自覚症状のみのケース。これでは「打撲程度で大袈裟な」と判断されてしまう。しびれの原因を立証する必要がある。

【立証ポイント】

基本通り、まずMRI検査、そして神経伝導速度検査を実施する。 MRIでは神経の絞扼(締め付けられている様子)を描出することを期待した。医師の読影によると、上腕骨尺骨神経周辺に液体貯留がみられた。やや甘い所見であるが、これを神経損傷もしくは絞扼の原因と主張した。しかし、肝心の神経伝導速度検査では有意な数値は得られなかった。 したがって、受傷機転の詳細な説明に加え、症状の経過をつぶさに説明=症状の一貫性を訴える方針に転換、14級9号に標準を絞った。

結果は「客観的な医学的所見には乏しく・・」も、受傷様態、症状推移、治療経過から14級9号を認めて頂いた。こちらの意図と回答が一致した結果となった。

(平成27年2月) 

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 異議申立ては等級の変更を主張するだけではありません。稀に同じ等級でも、誤った号が認定されることがあります。  これは調査事務所の単なるミスジャッジというより、提出した医証が不明瞭、不十分であるために起こります。12級であれば何号であっても自賠責保険金は同じ224万円です。しかし、号、つまり障害の系統は後の賠償交渉上、逸失利益の年数に大きく影響します。判例から12級13号(神経症状)は10年程度ですが、7号(機能障害)となれば67歳まで見込めます。若い被害者であれば差が何百万円にもなるのです。    号の変更申請はたまにあります。問題は等級が上がらないので私の成功報酬がないことです(泣)。   lachman ⇐ ラックマンテスト

12級13号⇒12級7号:脛骨近位端骨折 異議申立(40代男性・静岡県)

【事案】

 原付バイクでT字路前で停止中、左方より右折してきた自動車の衝突を受け受傷。その際、左膝脛骨を骨折した。骨折部をプレート、スクリューで固定し、1年半後に抜釘した。その後、リハビリを続けるものの、外出時に装具が必要で、疼痛も改善しなかった。さらに半年後に症状固定、後遺障害申請を行ったが、結果は12級13号。神経症状の評価に留まった。

【問題点】

 委任を受けた弁護士より、異議申立の依頼を受けた。まずは読影である。装具を必要とするほどの症状であれば、靭帯の損傷を最初にチェックしなければならない。また、骨癒合状態に相応の変形、転位があるか、関節面の不整等も抑えるべきである。やはりと言うか、CT、CR上で骨折した骨頭部が斜め下後方に転位している様子が確認できた。これを膝の不安定性の原因に加え、検査のやり直しを進めた。

【立証ポイント】

 まず最初に主治医と面談、事情を説明して立証作業の理解を得た。  MRIの再検査及びストレスXPを施行、靭帯を観察した。それらに動揺性をきたす程度の異常は認められなかった。関節面の不整は既にCT上で明らかだが、改めて確認できた。  次に伸展硬縮(膝がまっすぐ伸びない)による短縮障害も追求、下肢長の計測も加えた。左右の関節裂隙に差があるものの、脛骨自体の短縮は計測できなかった。 続きを読む »

【事案】

バイクで直進中、対向右折自動車と衝突。その際、ハンドルが腹部に食い込み、骨盤骨折、腹壁損傷、腸間膜動脈損傷、尿道・膀胱損傷となった。さらに、右橈骨遠位端骨折、左膝前十字靭帯損傷があり、右橈骨神経、左腓骨神経に軽度の神経麻痺も残った。 受傷後、最初の半年は臓器の手術、その後、形成科で腹壁の整復手術を数度、繰り返した。

【問題点】

1年半後に症状固定としたが、それぞれ以下の等級が認定された。

左膝の軽度不安定感(前十字靭帯損傷)=12級7号、右手しびれ(正中神経麻痺)=14級9号、腹部の醜条痕=12級相当、左足関節の可動域制限(腓骨神経麻痺)=非該当。 これらが併合され11級の認定。

このように、回復が良好な故、穏当な等級に留まっていた。しかし、内臓、腹部の手術は成功したものの、以来、排尿・排便の回数が激増し、仕事に復帰後も回数が減らず、尿漏れも併発していた。このまま相手保険会社との示談に不安を覚え、相談会に参加された。 まず、頻尿・頻便・尿漏れの原因を検証する必要がある。早速、検査を進めた。しかし事故から 3年半後のウロダイナミクス検査では膀胱・尿路に明らかな数値が得られなかった。直腸の検査に至っては時期を逸した状態。

【立証ポイント】

得意の立証パターンに乗せられず、やや手詰まりながら、事故全体を洗いなおすべく、3か所の病院すべてのカルテ開示を行い、延べ900ページの記録を丹念に検証した。手術経緯から腸間膜損傷、膀胱・尿道損傷の修復経緯と、その後の看護記録にて排尿・排便の記録をすべて抜出し、各部損傷を起因とする症状であることを訴えた。また画像上も骨盤が軽度の恥骨結合離開と左右の転位を示す画像をプリント、あらゆる変化を補強として提示した。 もちろん、ウロダイナミクス検査上、やや甘い数値ながら、事故外傷を原因とした確定診断を2人の専門医から導いた。これらの医証が自己申告上の排尿・排便の回数、尿漏れの程度を証明できるか?・・異議申立書提出後、8カ月の審査を要した。

結果は・・ 「腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」について、それぞれ以下の認定。

1、頻尿=11級10号 2、頻便=13級11号 3、尿漏れ=11級10号  それぞれ同一系統の障害として併合10級

さらに既存の11等級に併合され併合9級への変更となった。

調査事務所は症状の残存及び、内臓各部の損傷との因果関係を認めた結果となった。排尿・排便障害の程度、つまり、労務への影響は11級に留まったが、検査数値上、自賠責認定の限界と思う。これは逸失利益の伸長に関わる問題、引き続き連携弁護士へ戦いを残した。

複数の箇所を受傷した重大事故の場合、残存する障害が審査上から漏れてしまうことがある。尿漏れすら漏らさない、執念の再申請であった。

(平成27年2月)  

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 神経障害の診断名を見ると重症に思えます。しかし、程度によって箸やペンも握れず手術が必要な症状から、ビリビリしびれを感じる、力が入らない、細かい作業ができない、温冷感や触感が鈍った・・など軽重や症状が様々です。本件はまるで北斗神拳で秘孔を突かれたように、ずっと腕がしびれたままです。   c_kei_3 事案として外傷性頚部症候群、つまり首を起因する神経障害が多い中、本件は肘の打撲から生じた点が厄介です。頚部起因のしびれは14級9号の例が多く、的が絞り易いのですが、腕や脚の打撲を起因とする場合、なかなか症状を信じて頂けません。筋電図や神経伝導速度検査をしても明らかな数値が出ないことが多いのです。もっとも数値にはっきりでるような患者は骨が折れるなど、器質的損傷が明確なのです。

 それでは単なる打撲から神経症状の信ぴょう性を高めた認定例を見てみましょう。本例は器質的損傷のない障害の立証すべてに応用が利く、教科書的な作業と思います。  

非該当⇒14級9号:肘打撲・尺骨神経障害 異議申立(30代男性・埼玉県)

【事案】   

 自動車搭乗中、渋滞で停車していたところ、後続車の追突を受け、前車にも衝突、さらに中央分離帯にまで弾き飛ばされた。その際、ハンドルを握ったまま肘を強打し、以来、肘から手指にかけてしびれに悩まされる。 理学療法を継続したが症状の消失には至らず、9か月後に症状固定し後遺障害申請するも「非該当」の判断となった。

【問題点】  

 器質的損傷がない、つまり、骨折や靭帯損傷がなく、自覚症状のみのケース。これでは「打撲程度で大袈裟な」と判断されてしまう。しびれの原因を立証する必要がある。

【立証ポイント】

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 「12級になりませんか?」「非該当はおかしい!」・・たいていの異議申立を希望される相談者さんは自覚症状のみで証拠不足、もしくは時期を逸しています。早期相談を訴えているのはこれらの失敗を防ぐためです。後になって怒りをぶつけても無駄となります。この世にタイムマシンはないのです。

 それでも、被害者の窮状から捨て置けない件もあります。検査の追加ややり直しで何度も病院同行することになります。被害者と二人三脚、険しい戦いの記録を今日からいくつか紹介しましょう。

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