【事案】

高速道路を走行中、後ろからトラックにひっかけられ、スピンしたところ後続車に追突される。

【問題点】

保険会社からは後遺障害など残ってないので申請しても無駄と言われ、主治医からも後遺障害診断書は書かないと言われたため、後遺障害の申請をあきらめ、固定後数ヵ月が経過。提示された損害賠償額が妥当かどうかの相談に見える。

【立証のポイント】

診断書などの資料や自覚症状から、申請すれば認定の可能性があると判断。さっそく後遺障害診断書作成拒否の主治医に面談。丁寧に説明し、後遺障害診断書を書いていただくことに成功。何とか14級9号の認定を得る。     (平成26年2月)

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c_y_1 長いシリーズで語ってきたように、人身傷害は完成された保険とは言い難く、発売以来、約款をこまめに修正してきたものです。今後も裁判の判例を受けて改正される可能性があります。また、各社が独自色を強めて補償内容のオプションを増やすことも予想されます。

 それでも今夏~秋の約款改定で、訴訟基準と人傷基準の運用区別が定まったように思います。「裁判をすれば裁判基準で保険金を算定します。訴外交渉、斡旋、調停で決まった金額ならば、それが赤い本・青い本などで計算された金額であってもそれは採用せず、人傷基準で算定、支払い金額を決めます」・・これが保険会社のスタンダードな見解となるようです。これにて約款の整合性は高まったかもしれません。

 しかし、

 日本では交通事故で裁判をすることは稀で、損保会社の統計を見ると、交通事故の96%が訴外交渉による解決なのです。裁判をしなければ裁判基準の恩恵に預かれないことは道理として、被害者が裁判外で相当の金額を勝ち取るためには艱難辛苦を避けて通れません。それは直接交渉に限らず、紛争センターの斡旋や調停において、自らの時間とエネルギーを犠牲にして臨むこともあるでしょう。もしくは弁護士を利用すれば軍資金の出費が伴います。そのような苦労や犠牲、出費を避ければ、保険会社の計算する賠償金で納得しなければならい構造です。  それが被害者と加害者(側保険会社)の交渉による結果であれば、お互いが納得したこと、つまり民事上、何ら問題はありません。しかし、「安心の実額補償」「夢の全額保障」と謳われ、自ら掛金を払って加入した保険の場合はいかがでしょう。相手との交渉で納得のいく金額を勝ち取ろうとも、いざ過失分の請求では、自分が加入していた保険の基準に縛られる・・これは決して筋の通った話ではないと思います。また、それを回避するために、わざわざ人傷へ先に請求する、裁判を強行する、保険会社に約款を曲げて支払いさせる・・実に気持ち悪い。  自己の損害を補てんすべき保険金が、裁判基準か保険会社基準のどちらに成るのか?ダブルスタンダードの問題は、もはや「対相手保険会社」だけではなく、「対自分の加入している保険」となってしまったのです。

 やはり、保険商品は契約者にとって納得感があるもの、公平性のあるもの、でなければならないと思います。個人的には約款『保険金の決定』に(2)の規定を加えることで、約款に遊びを持たせ、契約者・人傷社間の公平性をキープすべきと思います。これが理想の約款です。↓  

第6条 損害額の決定 (理想)

(1)損害の総額は当社の基準で算定します。

(2)相手からの回収金、もしくは相手との交渉で決まった総損額が(1)の金額を上回る場合、弊社と相談の上、(1)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。  ただし、自損事故の場合、相手からの回収金がない場合は、この限りではない。

(3)裁判での判決や和解の場合、(1)(2)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。    これであれば、難しいこと抜きに「契約者の権利を害さない=損害の全額回収」が果たせます。まさに「夢の全額補償」の達成です。これは私の考えたオリジナルのアイデアではありません。かつて無保険車傷害特約:支払い保険金の算定の条項で書かれていたことです。無保険車傷害保険の支払い保険金を決定するにあたっては、(1)当社の基準 ⇒(2)契約者と話し合い ⇒(3)裁判の結果、保険金はこの3段階の算定方法で規定されていたのです。最新の約款から(2)”話合い”が無くなってしまったのはいかにも寂しい限りですが・・。

 (2)の後段、但し書きは「自分で事故ったら人傷基準でね」という意味です。人身傷害に助けてもらう立場としては、「自爆事故のケガも裁判基準でちょうだい!」はさすがに図々しいと思いました。 続きを読む »

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