「絶対説」vs「差額説」の争いの間、約款の改正が進みました。この「差額説」について、約款の条文から整理しておきましょう。
昨日の説明で理解した方は今日の内容は飛ばして結構です。専門家を名乗る以上、一応、約款を分析したに過ぎません。説明する側として判例や約款を専門用語で解説することは簡単です。昨日のように誰もが理解できるように簡単に説明する方がはるかに難しいのです。
それでは、損保ジャパンを例にします。
「差額説」の根拠となった求償ルール
第23条 代位
(1) 被保険者または保険金請求権者が他人に損害賠償の請求をすることができる場合には、当会社は、その損害に対して支払った保険金の額の限度内で、かつ、被保険者または保険金請求権者の権利を害さない範囲内で、被保険者または保険金請求権者がその者に対して有する権利を取得します。
「被保険者の権利を害さない範囲内で」とは、矢口さんが損害の全額を確保できるよう、加護火災が既に支払った保険金返還の限度を明示しています。東海も当時の約款、一般条項 第6節4 条「代位」に同じく規定していました。各社、求償に関して類似の一般条項があり、これが「差額説」が勝った根拠になったのです。
元々、この求償ルールは自動車保険の車両保険なども含めた、全般に適用する一般条項「代位」に規定していました。人身傷害の求償ルールとして、さらに約款改定を進めました。
「差額説」に適応させるべく、より整備された求償ルール
第28条 代位
(1)損害が生じたことにより被保険者または保険金請求権者が被保険者債権(注)を取得した場合において、当会社がその損害に対して保険金を支払ったときは、その被保険者債権(注)は当社に移転します。ただし、移転するのはのは次の①または②のいずれかの額を限度とします。
① 当会社が損害の額の全額を保険金として支払った場合
被保険者等債権(注)の全額
② ①以外の場