【事案】

バイクで直進中、交差点で並走自動車の急な左折に巻き込まれ転倒したもの。肋骨が一本折れた。さらに右手の第一中手骨を骨折した。これがベネット骨折。

【問題点】

ベネット骨折処置の基本通り、折れた中手骨を鋼線で固定(経皮ピンニング)してシーネで外固定した。後はなるべく関節硬縮を起さないよう、早めの可動域訓練が望まれる。しかし、相手運転手勤務の会社が社有車の保険を使ってくれず、相手保険会社も一括払い拒否状態。治療費の心配から健保を使用し、自宅でのリハビリを中心とした。

本人は慰謝料などは無理と、あきらめムードで相談にいらした。

【立証ポイント】

そんなバカな話は許さない。弁護士から相手の会社及び、相手保険会社への対応を任せ、こちらは直ちに病院同行した。そして親指の可動域計測に立会い、MP屈曲・伸展はもちろん橈側外転・掌側外転までしっかり計測いただく。さらに写真と申述書で可動域制限を丁寧に説明した。

ベネット骨折はその性質から癒合しづらく、可動域制限も頻発する骨折です。そして親指の可動域制限は10級と高いのです。 kansetu_26

(平成26年8月)   

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【事案】

バイクで直進中、T字路で対向自動車が急に右折、衝突したもの。初期診断名は左足関節脱臼骨折、左脛骨天蓋骨折、右橈骨遠位端骨折、モンテジア骨折、外傷性肝損傷、腹腔内出血、びまん性脳損傷(脳の障害はなし)・・以上、左脚と右腕に障害必至の重傷である。 【問題点】

モンテジア骨折(尺骨骨折による橈骨の肘関節脱臼)による肘関節の可動域はほぼ正常に回復、回内・回外も12級の基準以下、わずかの変形癒合が確認できる。これでは神経症状の残存による12級13号が限界。なんとか橈骨遠位端骨折による手関節の可動域制限で10級10号としたいが、わずかに基準外。他には正中神経の軽度麻痺によるしびれ、手術痕である醜条痕が残存した。

【立証ポイント】

手関節の掌屈・背屈の可動域は10級の基準である1/2制限にわずか5°オーバーしている。この場合、参考運動である橈屈・尺屈が1/2となれば繰り上げ10級となる。ここでモンテジア骨折の影響が大きく寄与する。モンテジア骨折により、尺骨の長さが微妙に伸長、やや転位もあるため、手関節、特に尺屈の可動域に影響があった。この参考運動の1/2制限による繰り上げで10級を確保した。なによりのポイントは上記すべての計測の意味を医師に説明し、理解を得た上で正確に記録したことに尽きる。 ちなみに尺骨の変形は「15°以上の屈曲」はなく、正中神経麻痺もしびれを残す程度のため、等級とはならなかった。もちろん手術の傷も掌以下の面積で非該当。

2か所の損傷を複合的に一つの障害として観察していくこと、さらに複数の症状について、最も高い等級にまとめる設計図を描くことが大事です。

※ 併合のため分離しています

(平成26年5月)  

 

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 前腕骨折の重傷例を解説します。骨幹部がポキッと折れた骨折は比較的、障害を残さずに治癒しますが、関節の脱臼を含むような骨折は何かと障害を残しがちです。  

病態

 モンテジア骨折とは、尺骨骨幹部骨折と同時に肘部の橈骨頭の脱臼したものです。原因は、転倒によって手を地面に強く突く、もしくは強くねじると、腕の中で尺骨と橈骨が強制的に回内運動、つまり内側にねじれを起こします。逆に回外、外側にねじれて脱臼することもあります。その時に尺骨は橈骨と強く衝突して骨折し、その衝撃が元になって橈骨は橈骨頭が脱臼してしまうのです。

 下図のようにねじれの方向によって伸展型(左)と屈曲型(右)に分かれます。 c_g_j_43    montejia ← 伸展型のXP

治療

 徒手整復を基本とします。多くはまず骨折した尺骨をプレート固定します。次に肘部脱臼の整復ですが、橈骨輪状靱帯や方形靱帯(それぞれ尺骨と橈骨をつなぐ靭帯)の断裂を伴う場合、再脱臼を防ぐためワイヤーで固定します。  

後遺障害

〇 橈骨の脱臼部により肘関節の可動域や、尺骨の長さが変わることにより手関節の可動域制限が起こる可能性があります。したがって肘関節は必須、その他、手関節や回内・回外の可動域制限の有無を確認します。

部位

主要運動 ...

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