なぜ、保険会社は弁護士費用特約(以下、弁特)にあえて細かい条件を付けたり、制限を加えるのでしょうか?
先日の研修会で弁護士先生から様々な情報が上がりました。やはり不道徳な請求が後を絶たないようです。保険会社は単に払い渋りの体質で意地悪をしているわけではありません。私は請求側が「弁特を荒らした」結果と思っています。
シリーズのおまけに研修会で聞いた1例を紹介します。
ある大手法人弁護士事務所に所属のβ先生が物損事故の依頼を担当しました。請求額はわずかな修理費等です。少額の依頼でも弁特がある故、事務所は引き受けたようです。本来、獲得額と弁護士報酬の兼ね合いを考慮し、費用倒れに近い案件は引き受けません。弁特があるから受任しましょう、という姿勢です。
本件の依頼者は熊本県です。そのβ先生は東京事務所に在籍ながら、熊本まで3回飛行機を使って宿泊し、その交通費、宿泊費などの経費及び、成功報酬はタイムチャージ(業務の処理時間で報酬を計算)で請求しました。報酬の総額で獲得額を超えたはずです。もし弁特がなかったら、依頼者はこの無駄使いのような依頼を頼まなかったはずです。
このβ先生、きっと熊本旅行がしたかったのでしょう。本件は典型的な「弁特の濫用」例として、事務所名および弁護士名が損保間で実名でさらされています。現在、その事務所は損保各社から厳しい支払いチェックを受けています。自業自得ですが、その事務所で真面目にやっている弁護士や事務員は気の毒ですね。
弁特は言うまでもなく被害者にとって非常にありがたい補償です。大事にしなければなりません。保険会社の弁特払い渋り、厳格化を責めるより、法律家側の不道徳な請求を問題視すべきです。
現状、弁特の請求に対し特に抵抗なく支払われている事務所と(保険会社側から支払いを少なくするための)弁護士対応とされている事務所に二分しているようです。 私も黒川温泉に行きたいわい!