骨折箇所が多く、それぞれ等級が付いても、併合のルールでそれほど等級が上がらないことがあります。14級はいくら認定されても14級まで。12級以上が複数認定されても上位等級に一つあがるだけ。8級が二つ以上なければ2等級上位併合しません。1~2か所の受傷で9級認定された被害者に比べ、3つ以上のケガで等級が付いたものの同じ9級止まりの被害者はそれなり苦痛も多く、同じ等級でも公平に思えないことがあります。これは後の損害賠償で弁護士が等級以上の苦痛の程度を主張することになります。
【事案】
バイクで直進中、交差点で左方より一時停止無視の自動車と衝突、左橈骨遠位端骨折、左尺骨開放骨折、肩甲骨骨折、第一胸椎横突起骨折、右腓骨外顆骨折、第7頚椎骨折、肋骨骨折、鼻骨骨折となる。骨折箇所の多さでは過去1、2位の多さ。
【問題点】
骨癒合は概ね良好ながら、ここまで折れると体幹バランスの異常、様々な神経症状が残存する。具体的にはめまいやふらつき、体幹の傾斜、頭痛、軽度の顔面神経麻痺と嗅覚障害もあるよう。これらを評価する等級は12級13号が限度、さらに本人の生活上の問題から早期に症状固定し、職務復帰を急ぐことになった。
【立証ポイント】
可動域制限を正確に計測するのみ。まず手首10級+肩関節12級で上肢は9級を確保。嗅覚について、専門医の診断では事故との因果関係に疑問はあったが、これだけのケガなので14級の認定は得た。その他の部位について、可動域は正常値レベルに回復、さらに癒合良好のため神経症状も12級に届かず。このように上肢以外は14級のオンパレード、あと一つ上位併合させることができなかった。しかし本人が解決を急ぐため、即弁護士に引き継いだ。 私としては回復も認定等級も中途半端な印象が残った案件であった。