常日頃から、弁護士はじめ各士業との連携はもちろん、医療機関とも連携することにより被害者救済に益する協業体制を推進しています。当然ですが、医療機関との連携はクリーンな関係を前提としています。法律家と医療機関の関係には高度な道徳心が必要です。とくに、柔道整復師の資格者である整骨院・接骨院さんとは、限定的な連絡体制に留まります。
整骨院・接骨院との連携が限定的である理由を語る前に、まずは業界の背景から。先日の朝日新聞の記事を見てみましょう。 車を持つすべての人が加入する自動車損害賠償責任(自賠責)保険に対し、接骨院からの保険金請求が急増していることが分かった。治療費の基準がなく、請求内容の審査もずさんなため、不正請求が横行。「生後半年の赤ちゃんが腰痛を訴えた」など、現実にはありえない診断がまかり通っている。国土交通省、金融庁など関係省庁は、改善策の検討に乗り出した。
損害保険料率算出機構・自賠責損害調査センターによれば、2012年までの5年間で、交通事故件数は76万件から66万件に減った。負傷者は94万人から82万人に減少。一方、12年度までの5年間で、接骨院が自賠責に請求した総施術費は452億円から673億円と1・5倍に増えている。
接骨院を営む柔道整復師らでつくる公益社団法人・日本柔道整復師会によると、接骨院による自賠責への請求が増えた一因には、交通事故患者を抱き込んでの不正・過剰請求がある。 (朝日新聞3月22日) 事故が減っているのに、施術料(治療費と区別されています)の急激な伸びは、不正請求以外からの理由では説明できない。このような分析は柔道整復師会(身内組織ですよ!)だけではありません。弊所では、年間360人もの交通事故被害者さんと会い、毎日のように病院に行っています。現場でも、整骨院・接骨院に通院している被害者の例を多く見ています。特徴は以下の通り。 1、病院よりも待ち時間がなく、予約等の制約も少ない。比較的、夜間や休日もやっているところがある。 2、先生も親身に話を聞いてくれる。スタッフも親切。 3、相手の保険会社も病院同様、施術料を出してくれる。 したがって毎日のように通う。 このように、病院とは違った良さがあります。「だから病院の治療費より高くていいのだ!」と断定するのはいささか苦しいと思います。よくよく施術証明書を見ると、事故とは関係ないような受傷名が載っていたり、過剰と思える施術がなされていたり、とどめは通院していない施術日に〇がしてあったり・・・このような不正は決して珍しくないのです。「慰謝料が多く出るから通院日多めに〇つけとくね~」、あけっらかんと言った柔整師もおりました。これは立派な保険金詐欺です。
もちろん、病院も含め、どの業界にも不道徳な者がおりますので、一部の不正な柔整師だけを非難するのはフェアではありません。しかし、現場からは決して「一部の」とは言えないほど不正を多く目にするのです。
さらに、後遺障害が残るような被害者にとって、整骨院への通院は深刻なデメリットが存在します。軽傷であればこのまま接骨院での施術で完治して示談、事故は解決となります。しかし、症状が長引く患者さんには、最大の落とし穴が待っています。 つづく