昨日の記事には少なからず反響をいただきました。
「そんなことはない!」と弁護士から反論が来ると思っていましたが、まるで逆で、「痛いところを突いてくるなぁ」、「その通り!よく言った!」とおおむね共感する意見です。被害者救済を根幹に置いている弁護士先生には清々しい物言いに聞こえますが、複雑な心境の先生もいらっしゃると思います。この手の議論で迷ったら私たちのチームはこう考えます、
「それが被害者のためになるのか」
被害者救済をスローガンにする限り、答えは明らかです。色々な考え方があっても決してブレません。 ではテーマを変えて行政書士の書面交渉も検証してみます。
書面による賠償交渉は適法or違法?→ 有効or残念?
10年前より多くの行政書士が交通事故業務に参入しています。昨日の議論「事前認定か被害者請求か?」について言えば、大多数が被害者請求を推奨しています。さすがに「事実証明」が仕事なので、まさに等級認定業務はそれにかなうものです。 しかし少なからず違った業務を主としている先生もおります。それは等級が認定されてから相手の保険会社と交渉をしている先生です。被害者請求すらせず、事前認定で等級認定作業を相手保険会社に任せて、等級がでたらそれをもとに裁判基準で賠償金請求書を作成、保険会社に提出する作業です。私なら30分でできる作業です。いやいや中には凝った先生もおり、様々な判例やデータを添付し、良い仕事をするなぁと感心することもあります。 もちろん直接、保険会社の担当者と顔を突き合わせての交渉は「代理行為」なのできません。紛争センターなどの斡旋機関でも同席できません。被害者の「代理行為」ができるのは弁護士資格をもつもののみだからです。では書面作成だけなら代理行為(交渉)ではない?このような議論になります。多くの弁護士会の見解では「たとえ書面作成であっても実態上は賠償交渉ではないか?」と厳しい目をむけております。
さてこのような議論を前に、私の見解はこうです。
「それが被害者のためになるのか」
難しい法解釈は学者先生に任せるとして、被害者救済の最前線の実働部隊である私たちは、書面による交渉など「生ぬるい」と感じています。なぜなら、最初から被害者に寄り添い、損害の立証作業を積み重ね、適正な後遺障害認定へ導くことが一番大事と考えています。そしてもう一つ大事なことである賠償交渉においても、連携弁護士による裁判・紛争センターを前提とした強交渉で良い結果を量産している事実があります。
ここで、某大手保険会社の担当者Ζさんの本音を、
「あくまで被害者本人との交渉では、いくら書面で裁判基準を要求してきても、『相対交渉なので自社基準でしか払えません』と、突っぱねます。まぁ少しは上乗せしてあげますが。」
そこで行政書士が被害者と同席して交渉に臨んできても、
「被害者との交渉で、相手に行政書士が入ってきて話をするのはある意味、楽です。なぜなら弊社の提示額と赤い本(≒裁判基準)の中間くらいで手を打ってくれますので。もし赤い本基準の満額要求で引かなければ、『先生、これ以上の交渉は非弁行為ですよ』と言えば引っ込みますので(笑)」
とまぁ、実態はこのような体たらくです。(担当者喜ばせてどうするのよ!)
ここで保険会社と被害者置き去りの妥協的解決を図るか、紛争センターに持ち込むかの選択となります。紛争センターでは被害者一人を交渉に向かわせ、ここでも書面だけ渡して、先生自身は廊下で遠隔操作です。以前も取り上げましたが、こんな中途半端な方法で満足のいく数字は取れませんし、このようなサポートに被害者から多額の報酬を取ることに疑問が残ります。
ここで、紛争センターの斡旋弁護士の本音を、
「僕が苦労してあなた(被害者)のために保険会社から弁護士基準の賠償金を交渉してあげているのに、なんで計算しただけの行政書士に何十万も払うの?その報酬は払う必要はないよ!」。
とまぁ、実態はこのような体たらくです。書類を持たすだけで「増額は行政書士の(仕事の)おかげ」と見せかけて、成功報酬を得る、これはズルいと思われています。 このような周囲の厳しい監視から、行政書士は賠償交渉の場面に、こそこそ介入するしかない立場なのです。 もちろんごく少数の被害者に「自ら交渉をしたい、書面、資料だけサポートしてほしい」というニーズもあります。しかし保険会社はそんな甘い存在ではないことを認識してほしいと思います。紛争センターでも徹底的に争う姿勢が大事です。ここでダメなら訴訟をも辞さない気概を示さねばいい数字は獲れません。これは有能な弁護士により成し得る交渉です。
昨日、今日と同業批判のような記事になってしまいましたが、誤解しないで下さい。自由経済では書面作成や交渉も経済活動の一つに過ぎません。違法でなければどのような解決方法でもニーズがある限り、私ごときが口をはさむ問題ではありません。
しかし被害者は情報過多の中、しっかり解決方法を吟味し、ご自身にとって最適な専門家を間違わずに選択してほしいと思っています。だからこそ包み隠さず、関係者の本音をあえて披露しました。
これから誰に交通事故の解決をゆだねるのか?しっかりと見極めて下さい。