後遺障害の立証で難しい事の一つ、それは既存障害との区別です。既存障害とは元々の持病のことです。そしてもう一つ、事故との因果関係を否定される、受傷数か月後に発生した症状です。これは事故の損傷が引金となったものなのか、それとも関係なく起こったのか?・・・調査事務所は当然後者を選択し、障害を否定します。 相談を受ける側も事故による障害であるのかどうか、それを立証できるか否か、知識と経験を積む必要があります。 3、肩腱板損傷と区別しなければならない疾患
■ 肩関節周囲炎 (いわゆる五十肩)
早い人で40代から発生する、慢性的な疼痛と拘縮です。拳上(腕の挙げ下げ)だけではなく内旋・外旋すべてに痛みが起きます。肩峰下滑液包にプロカインを注入するプロカインテストは診断治療に有効です。あとは保存療法になりますが、半年~1年で緩和します。
これを被害者が「交通事故の後遺障害だ!」と主張しても相手にされません。逆に、腱板損傷なのに医師が検査もせず、「五十肩ですね。そのうち治ります」となったら最悪です。 ■ 石灰性腱炎 (石灰性沈着性腱板炎)
腱板内にカルシウム結晶のかたまりが付着して、間節が動く際それが触り激痛が起きます。レントゲンで視認できます。ほとんどが保存療法で治癒します。 ■ 肩峰下インピンジメント症候群
反復する拳上動作で棘上筋や、肩峰下滑液包が鳥口肩峰アーチに衝突して、損傷や炎症を生じます。腱板断裂に伴い発症するケースもありますが、これは突発的な外傷によるものではなく、連続した動作によっておきる関節傷害です。したがって野球のピッチャーには投球障害肩としてお馴染みです。