腓骨神経麻痺。すねの外側を走る神経が断裂や損傷を受け、足首や足指の自動運動が不能になる症状です。 浅腓骨神経と深腓骨神経の2本の神経が前頚骨筋、長指伸筋、長母指伸筋、第三腓骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋、短指伸筋、を支配しています。
腓骨や脛骨の骨折の影響で神経が損傷するケースが多く、これらが損傷すると自分の意思で足首・足指を曲げられなくなります。程度の軽重はありますが、以下の後遺障害となります。 ○ 足首 → 1下肢の3大関節中の1下肢の用を廃したもの(著しい障害を残すもの =10級) ○ 足指 → 1足の第一の足指又は他の4の足指の用を廃したもの =12級 ・・・ この場合、上記二つの認定から、併合7級となるはずでした。 この障害の立証で、被害者は2つの壁を経験しました。
第1の壁 整形外科の仕事は骨をくっつけること?脛骨骨折の手術で有名なある名医の手術を受けました。プレートとねじで折れた脛骨をしっかり固定、10か月後見事に骨をくっつけプレートを摘出しました。腕は評判通りです。レントゲンを見ながら、「どうだね、元通りになったろ」と自画自賛です。しかし患者は「あれ足首が動かないな・・」、踏ん張りが利かなくて杖がないと歩けません。足首はだらんと下がったまま動きません。スリッパも自然に脱げてしまう。
対する医師は、「あとはリハビリを頑張ることだね」と。満足げにリハビリ科に引き継ぎました。足首が曲がらない事には責任がないようです。
後に後遺障害の審査となり、保険会社に言われるまま、そのレントゲン写真を提出しました。結果は 「骨の癒合は正常で、変形癒合、偽関節は見られないので・・・云々。しかしながら痛みや運動不能は認められるので局部に頑固な神経症状を残すものとして12級13号・・・えっ、杖なしに歩けなくなったのにそんな軽い障害?となりました。
確かに脛のレントゲンを見ますと、骨折の癒合は問題ないのですが、MRIでは、周辺の筋組織の損傷がはっきり残っています。さらに外見からも筋委縮がはっきり見て取れます。左右の足の太さが違っているのです。そして、いくらリハビリしても足首も足指も曲がりません。これらの事実は審査されていません。
第2の壁 治療は終わったのに、今頃になってなんで検査を?12級13号では異議申立の必要があります。必要な作業は・・・ 1、足首・足指の可動域について再度計測します。骨をきれいにつなげる名医でさえ、計測を間違えています。 2、徒手筋力テストを行い、筋力低下を数値化します。 3、筋委縮を立証するため左右の足の外周を計測します。 ※ 私は写真も添付しました。 4、そして、必須は神経伝導速度検査。 麻痺が確実なら「誘導不能」となります。 5、できれば、針筋電図検査。 神経麻痺立証の決定版です。これができれば、4の必要性は下がります。 主治医にお願いして、検査をやり直しです。しかし、この名医である主治医は「可動域の計測は正しい」と自らの間違いを認めません。さらに「筋電図は必要ない」と紹介状を書いてくれません。「私の治療に問題はなかったのだ!」と依怙地になっています。患者さんはこれ以上逆らうこともできず、すごすごと帰ります。手術でお世話になったのだから当然です。 これら困難な2つの壁を乗り越えるのが私の仕事です。もちろん、医師の技術と尽力には敬意を表します。しかしベストな流れは骨の癒合の時点で上記1~5の検査を実施させ、間違いのない診断書を作成することです。そのために、頑なな主治医を説得するか、場合によっては別の病院へ誘導する必要があります。 ちなみにこの被害者のケースでは異議申し立てを行い、腓骨神経麻痺で9級、股関節可動域制限や膝関節硬縮による短縮障害とも併合しなんとか7級までこぎつけました。悪戦苦闘、9か月もかかったのです。 ありのままの真実を立証する・・・名医のおかげで茨の道でした。 続きを読む »